半導体製造装置の業界は、少数の企業が上位を占める寡占的な市場です。ただ、各社は決算期も通貨も異なるため、ランキングを比べようとすると数字がかみ合わず、サイトによって順位が違うということが起こります。

この記事では、2026年8月時点で公表されている各社の直近通期決算をもとに、半導体製造装置メーカーの売上高ランキングを整理します。あわせて、ランキングを正しく読むために必要な注意点と、日本企業の位置づけ、台頭する中国メーカーの状況までまとめました。

半導体製造装置メーカー 世界ランキング(売上高)

各社が公表している直近の通期決算は次のとおりです。

順位 企業 国 直近通期の売上高 決算期 主力装置
1 ASML オランダ 327億ユーロ(約373億ドル) 2025年12月期 露光装置
2 Applied Materials 米国 283.7億ドル 2025年10月期 成膜、エッチング、イオン注入、CMPほか
3 Lam Research 米国 232.3億ドル 2026年6月期 エッチング、成膜
4 東京エレクトロン 日本 2兆4,435億円(約151億ドル) 2026年3月期 コータ・デベロッパ、エッチング、成膜、洗浄
5 KLA 米国 135.8億ドル 2026年6月期 検査・計測
6 アドバンテスト 日本 1兆1,286億円(約70億ドル) 2026年3月期 テスタ
7 NAURA(北方華創) 中国 298.4億元(約42億ドル) 2024年12月期 成膜、エッチング
8 SCREENホールディングス 日本 6,057億円(約37億ドル) 2026年3月期 洗浄装置
9 ディスコ 日本 4,368億円(約27億ドル) 2026年3月期 ダイシング、グラインダ

※ドル換算は2026年7月時点の水準(1ドル=約162円、1ユーロ=約1.14ドル、1ドル=約7.1元)を用いた参考値です。為替によって変動します。
※NAURAのみ2025年通期の確定値が確認できなかったため、2024年12月期の数値を掲載しています(後述)。

上位5社で市場の大半を占める構造が、長く続いています。ただし、この表をそのまま「実力の順位」と受け取るのは危険です。理由を次に説明します。

ランキングを読むときの3つの注意点

①決算期が企業ごとにバラバラである

これが最大の落とし穴です。表を見ると分かるとおり、対象期間は企業ごとに大きく違います。

  • ASML:2025年1月〜12月
  • Applied Materials:2024年10月〜2025年10月
  • Lam Research・KLA:2025年7月〜2026年6月
  • 日本企業(東京エレクトロン、アドバンテストなど):2025年4月〜2026年3月

この表で最も古い期間を見ているのはApplied Materialsです。同社の2025年10月期は2024年11月からの1年間にあたり、Lam ResearchとKLAの2026年6月期より8か月ほど前に終わっています。

実際、Lam ResearchとKLAは2026年7月末に2026年6月期の通期決算を発表し、数字が大きく動きました。

企業 2025年6月期 2026年6月期 増減
Lam Research 184.4億ドル 232.3億ドル +26.0%
KLA 121.6億ドル 135.8億ドル +11.7%

順位そのものは変わりませんでしたが、上位との差は縮まりました。Applied MaterialsとLam Researchの差は約99億ドルから約51億ドルへ、東京エレクトロンとKLAの差も約29億ドルから約15億ドルへ、いずれもおよそ半分になっています。

決算期がずれている以上、ランキングは「同じ瞬間の比較」ではありません。新しい決算が出るたびに、順位も差も動きます。

ランキング記事を読むときは、必ず決算期を確認することをおすすめします。

②通貨と為替の影響が大きい

ASMLはユーロ、日本企業は円、米国企業はドルで決算を発表します。順位をつけるにはどこかの通貨に統一する必要がありますが、換算した瞬間に為替の影響を受けます。

とくに近年の円安局面では、日本企業はドル換算すると実力より小さく見えます。東京エレクトロンの2026年3月期は売上高2兆4,435億円と過去最高を更新しましたが、ドル換算では約151億ドルとなり、円高だった時期に比べて見劣りする数字になります。

「日本企業の順位が落ちた」という記事を見たときは、事業が縮小したのか、為替が動いたのかを分けて考える必要があります。

③売上高の中身が同じではない

企業によって、売上に含まれる事業の範囲が異なります。

  • 装置以外の事業を含む場合がある:SCREENホールディングスはディスプレイ関連やプリント基板関連の事業も手がけており、売上高すべてが半導体製造装置ではありません。
  • サービス・部品の比率が違う:装置は納入後も保守や部品交換の収入が長期間発生します。設置台数が多い企業ほど、この比率が高くなります。
  • カバーする工程の幅が違う:Applied Materialsは多くの工程に製品を持つ一方、ASMLは露光装置に集中しています。売上高が近くても、事業構造はまったく違います。

売上高ランキングは規模を知るには有効ですが、「どの装置で強いのか」は別に見る必要があります。装置別の状況は記事の後半でまとめました。

上位5社の特徴

ASML(オランダ)

露光装置に特化し、そのなかでも最先端のEUV露光装置を製造できる世界で唯一の企業です。2025年12月期の売上高は327億ユーロで、前年比15.6%増でした。2026年通期は340億〜390億ユーロを見込んでいます。

1社しか供給できない装置を持つため、業界内でも特異な立場にあり、各国の輸出規制の議論でも常に焦点となります。

Applied Materials(米国)

成膜、エッチング、イオン注入、CMPなど、幅広い工程をカバーする総合メーカーです。2025年10月期の売上高は283.7億ドルで、6期連続の増収となりました。単一の装置に依存しない事業構造が強みです。

Lam Research(米国)

エッチングと成膜を主力とし、とくにメモリ向けで強い企業です。3D NANDのように深い穴を掘る加工では、同社の技術が重要な役割を果たしています。2026年6月期の売上高は232.3億ドルで、前年比26.0%増と高い成長を示しました。希薄化後EPSは5.76ドル(前年4.15ドル)、営業利益率は35.3%です。AI関連の半導体需要が業績を牽引しており、同社は売上高・営業利益率・EPSがいずれも過去最高になったとしています。

東京エレクトロン(日本)

日本最大の半導体製造装置メーカーで、コータ・デベロッパ(塗布・現像装置)では世界的に高いシェアを持ちます。エッチング、成膜、洗浄、プローバなど製品の幅も広い総合メーカーです。

2026年3月期の売上高は2兆4,435億円と過去最高を更新した一方、営業利益は6,249億円と前期比10.4%の減益でした。研究開発費を前年比11.1%増の2,778億円に増やしたことなどが要因で、将来への投資を優先した決算といえます。

KLA(米国)

検査・計測装置で世界最大手です。製造そのものは行いませんが、微細化が進むほど「不良をいかに早く見つけるか」の重要性が増すため、存在感は年々高まっています。2026年6月期の売上高は135.8億ドルで前年比11.7%増、純利益は48.3億ドル(同18.9%増)でした。なお同社は2026年6月11日に1株を10株にする株式分割を実施しています。

日本勢首位の企業については東京エレクトロン(TEL)とは?で、工程別の強さと成り立ちを解説しています。

なぜ上位数社に集中するのか

半導体製造装置の市場が寡占になりやすいのには、いくつか理由があります。

第一に、装置ごとの専門性が非常に高いことです。露光と洗浄はまったく別の技術体系で、汎用的な機械メーカーが後から参入できる領域ではありません。

第二に、顧客が装置を簡単に変えられないことです。装置を替えると製造条件を一から作り直す必要があり、歩留まりが安定するまで時間がかかります。実績のある装置が選ばれ続ける構造になります。

第三に、継続的な研究開発投資が必要なことです。微細化のたびに装置も進化させる必要があり、規模の大きい企業ほど投資を続けられます。東京エレクトロンが減益を受け入れてまで研究開発費を増やしているのは、この競争があるためです。

日本企業の実力と得意分野

日本企業は、総合力で上位に入る東京エレクトロンだけでなく、特定分野に強い専門メーカーが多いのが特徴です。

企業 2026年3月期 売上高 前期比 強い分野
東京エレクトロン 2兆4,435億円 +0.5% コータ・デベロッパ、エッチング、成膜、洗浄
アドバンテスト 1兆1,286億円 +44.7% テスタ
SCREENホールディングス 6,057億円 △3.1% 洗浄装置
ディスコ 4,368億円 +11.1% ダイシング、グラインダ

この表からは、業界内の温度差が読み取れます。

とくに目立つのがアドバンテストの44.7%増で、売上高は初めて1兆円を突破しました。AI向け半導体はチップが複雑になるほど検査に時間がかかるため、テスタの需要が急拡大しています。くわしくはAI・HBM需要で伸びる半導体製造装置で解説しています。前述のSEMIの予測でも、2026年のテスト装置は前年比31.0%増と、前工程装置(同23.1%増)を上回る伸びが見込まれています。

ディスコも売上高が初めて4,000億円を超え、6期連続の増収増益となりました。HBMのようにチップを薄く削って積み重ねる製品では、同社の研削・切断技術が欠かせません。

一方、前工程の大手である東京エレクトロンは横ばい、SCREENは減収でした。AI需要の恩恵は業界全体に均等に及んでいるわけではなく、テストや後工程に近い領域から先に表れていることが分かります。

このほか、熱処理・成膜のKOKUSAI ELECTRIC、CMPの荏原製作所、封止装置のTOWA、プローバの東京精密など、工程ごとに世界的な地位を持つ企業が揃っているのが日本の装置産業の厚みです。くわしくは日本の半導体製造装置メーカー一覧|工程別に見る得意分野をご覧ください。

6位のテスタ専業メーカーについてはアドバンテストとは?で、計測器から始まった沿革と収益構造を解説しています。

台頭する中国メーカー

近年のランキングで最も大きく順位を上げているのが、中国のNAURA(北方華創)です。

同社の2024年12月期の売上高は298.4億元で前年比35.1%増、2025年1〜9月も273.0億元と前年同期比34.1%増の高い成長が続いています。報道によれば、2025年上半期時点で世界6位の規模に達したとされます。

背景にあるのは、米国による輸出規制です。先端装置の入手が制限された中国では、国産装置への置き換えが政策的に進められており、国内需要が国産メーカーの成長を押し上げる構造になっています。

ただし、成長分野には偏りがあります。中国メーカーが実績を伸ばしているのは成膜や熱処理など比較的参入しやすい領域が中心で、EUV露光のような最先端領域では依然として大きな差があります。「金額の順位」と「技術的な到達点」は分けて見る必要があります。

後工程に限った企業の一覧は、後工程装置メーカー一覧で工程順に整理しています。

装置別に見る「どの分野で誰が強いか」

売上高の順位と、個別装置での強さは一致しません。工程ごとの代表的なメーカーは次のとおりです。

装置・工程 主要メーカー
露光装置 ASML(EUVは独占)、キヤノン、ニコン
コータ・デベロッパ 東京エレクトロン
エッチング装置 Lam Research、東京エレクトロン、Applied Materials
成膜装置 Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC
洗浄装置 SCREENホールディングス、東京エレクトロン
CMP装置 Applied Materials、荏原製作所
検査・計測装置 KLA、日立ハイテク、レーザーテック
ダイシング装置 ディスコ、東京精密
封止(モールド)装置 TOWA
テスタ アドバンテスト、Teradyne

工程ごとの首位企業は半導体製造装置の工程別・世界シェアまとめで一覧にしています。それぞれの装置の仕組みについては個別記事で解説しています(公開済み:洗浄装置/エッチング装置/成膜装置/CMP装置/検査装置/プローバとテスタ/イオン注入装置/熱処理装置/露光装置/後工程装置/ダイシング装置/ダイボンダーとワイヤボンダー)。市場全体の規模と推移は半導体製造装置の市場規模と今後の予測をご覧ください。

✍️ ひとこと

ランキングはどうしても順位に目が行きますが、面白いのは各社がそれぞれ違う土俵で戦っていることです。

売上規模で並べると見えなくなりますが、どの企業にも「ここだけは譲らない」という領域があります。数字の裏にある得意分野まで見ると、この業界の地図はぐっと立体的になります。

— semisouchi.com 編集室

よくある質問

ランキングはいつ更新されますか?

各社の決算発表のたびに変わります。日本企業は4月下旬から5月にかけて本決算を発表し、Lam ResearchとKLAは7月下旬から8月、Applied Materialsは11月、ASMLは1月です。年間を通じて数字が入れ替わるため、「いつ時点のランキングか」を確認することが重要です。

売上高ランキングと市場シェアは違うのですか?

違います。売上高は企業全体の規模を示すもので、装置以外の事業を含む場合もあります。一方、市場シェアは特定の装置分野の中での占有率です。売上高では上位でなくても、特定の装置では世界トップというケースは珍しくありません。TOWAやレーザーテックがその例です。

就職・転職先として見る場合、何を基準にすべきですか?

売上規模だけでなく、どの工程を扱っているかを見ることをおすすめします。同じ装置メーカーでも、扱う技術や顧客、海外拠点の有無は大きく異なります。装置メーカーの職種や仕事内容については半導体製造装置メーカーの仕事内容と年収で解説しています。

中国メーカーは今後の脅威になりますか?

領域によって答えが変わります。成熟世代向けの装置では価格競争力を背景に存在感を強めていますが、最先端領域では技術的な差が残っています。また、装置は「使いこなすノウハウ」とセットで価値を持つため、装置単体の性能だけで置き換えが進むわけではない点も押さえておく必要があります。

まとめ

  • 売上高の上位はASML、Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、KLAの5社
  • 各社は決算期も通貨も異なるため、ランキングは「いつ時点か」を必ず確認する
  • Lam ResearchとKLAは2026年6月期の通期決算が未発表で、次回発表で数字が大きく変わる可能性がある
  • 日本勢ではアドバンテストが44.7%増で初の1兆円超え、ディスコも初の4,000億円超えとAI需要の恩恵が明確
  • 中国のNAURAが急成長しているが、伸びている領域と最先端領域は分けて見る必要がある

装置の全体像については半導体製造装置とは?種類と役割を工程順にわかりやすく解説、工程の区分については半導体の前工程と後工程の違いもあわせてご覧ください。

参考・出典