後工程の装置メーカーと聞いて、すぐに社名が浮かぶでしょうか。

前工程ではASML、アプライドマテリアルズ、東京エレクトロンといった名前が知られています。一方、後工程は「地味な工程」という印象を持たれがちです。

ところが、後工程装置で最大手の企業は、売上高が1兆円を超えます。前工程の主要メーカーに匹敵する規模です。

この記事では、後工程装置メーカーを工程順に整理し、どの企業がどこで強いのか、そしてなぜ前工程とは企業の顔ぶれが違うのかを解説します。

後工程装置メーカーとは|前工程と何が違うのか

後工程は、ウェハーをチップに切り分け、パッケージに収め、動作を確認するまでの工程です。工程の中身は半導体の後工程装置とは?で解説しています。

ここで押さえておきたいのは、前工程と後工程では装置ビジネスの形そのものが違うという点です。

前工程装置 後工程装置
装置1台の価格 数億〜数百億円 数千万〜数億円
1工場あたりの台数 比較的少ない 多い
主な顧客 半導体メーカー、ファウンドリ 半導体メーカーに加えOSAT
消耗品の比重 工程による 大きい(ブレード、金型、キャピラリ)
参入企業の数 少数に集中 比較的多い

装置単価が低く、台数が多い。そして顧客が半導体メーカーだけではありません。組立・検査を受託するOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)も大口の買い手です。

買い手の裾野が広いぶん、後工程装置には多くの企業が参入しています。前工程ほど極端な寡占にならないのは、このためです。

工程別マップ|どの企業がどこを担うか

後工程を工程順に並べ、主要メーカーを配置すると次のようになります。

工程 装置 主要メーカー
研削 バックグラインダ ディスコ、東京精密
切断 ダイシング装置 ディスコ、東京精密
搭載 ダイボンダ ASMPT、ヤマハロボティクス、キヤノンマシナリー
接続 ワイヤボンダ ASMPT、Kulicke & Soffa、ヤマハロボティクス
接続(先端) TCB、ハイブリッドボンダ ASMPT、Besi、東レエンジニアリング
封止 モールド装置 TOWA、ヤマハロボティクス、ASMPT
検査 X線検査など 各社
テスト テスタ、プローバ、ハンドラ アドバンテスト、テラダイン、東京精密

この表を見ると、工程ごとに顔ぶれがはっきり入れ替わるのが分かります。前工程のように総合メーカーが幅広く押さえる構図ではありません。

以下、領域ごとに見ていきます。

研削・ダイシング|日本勢が主導する領域

ウェハーを薄く削り、チップに切り分ける領域は、日本企業が長年にわたって世界を主導しています。

ディスコ

切る・削る・磨くという精密加工に特化した企業です。ダイシング装置とグラインダで高い地位を占めています。

2026年3月期の売上高は4,368億円(前期比11.1%増)で、初めて4,000億円を超えました。営業利益は1,850億円、6期連続の増収増益です。GPUやHBM向けの需要が業績を牽引しています。

この企業の特徴は、装置とブレードなどの消耗品を一体で供給している点にあります。装置が稼働する限り消耗品の需要が続くため、収益が安定しやすい構造です。詳しくはダイシング装置とは?で解説しています。

同社の沿革と一点集中の構造はディスコとは?で掘り下げています。

東京精密

ダイシング装置、グラインダに加えて、計測機器やプローバも手がけます。2026年3月期は全社売上高1,668億円のうち、半導体製造装置部門が1,278億円(前期比12.7%増)でした。

先端パッケージ向けのグラインダと、HBM向けのプローバが伸びています。切断と検査の両方に足場を持つのが、この企業の特徴です。

ボンディング|海外勢が主導する領域

一転して、チップを載せて電極どうしをつなぐボンディングの領域では、海外勢の存在感が大きくなります。

ASMPT

シンガポールと香港を拠点に、後工程装置を幅広く展開する企業です。2025年12月期のグループ売上高は17.6億米ドル(前年比10.0%増)でした。

注目すべきは先端パッケージ事業です。売上高は5.32億米ドルと前年比30.2%増で、全社売上の約30%を占めるまでになりました。とくにTCB(熱圧着ボンディング)は前年比およそ146%増という伸びを示しています。

同社はTCBの市場規模を2025年の7.6億米ドルから2028年には16億米ドルへ拡大すると見込み、そこで35〜40%のシェアを狙うとしています。

Besi(オランダ)

ボンディング装置に特化したメーカーで、ハイブリッドボンディングに力を入れています。

2025年12月期の売上高は5.913億ユーロと前年比2.7%減でした。ただし、この数字だけを見ると実態を見誤ります。

第4四半期の受注高は2.504億ユーロで、前年同期比105.4%増。2.5D実装向けやハイブリッドボンディングの需要が急増したためです。ハイブリッドボンディングを採用した顧客数も、2025年末の15社から2026年第2四半期末には21社へ増えています。

売上が横ばいでも受注が倍増している——装置メーカーを見るときに受注高が重要になる典型例といえます。

Kulicke & Soffa(米国・シンガポール)

ワイヤボンダの大手です。2025年9月期の売上高は6.541億米ドルでした。2026年9月期は7.30〜7.40億米ドルを見込んでいます。

ワイヤボンディングは1960年代からある技術ですが、いまも膨大な数の製品で使われ続けています。両者の役割の違いはダイボンダーとワイヤボンダーの違いで解説しています。

封止(モールド)|再び日本勢が強い領域

樹脂で固める封止工程では、日本企業が主導的な位置にあります。

TOWAは2026年3月期に売上高543億円と過去最高を更新しました。営業利益は69億円で前期比22.1%減でしたが、受注高は595億円と25.6%増で過去2番目の水準です。次世代のコンプレッション成形装置で量産コストの半減を狙っています。

封止工程の詳細はモールド装置とは?をご覧ください。

テスト|実は後工程で最大の市場

ここが、後工程装置を語るうえで見落とされがちな点です。

組立装置ばかりが注目されますが、金額で見れば最大の領域はテストです。

アドバンテスト

2026年3月期の売上高は1兆1,286億円(前期比44.7%増)、営業利益は4,991億円(同118.8%増)に達しました。

中核のテストシステム事業だけで売上高9,882億円(同46.8%増)です。AI向け高性能半導体のテスト需要が急拡大したことが要因とされています。

この規模は、ディスコの2倍以上、TOWAの20倍以上にあたります。「後工程は小規模」という印象は、テストを勘定に入れていないために生じる誤解です。

テスタ・プローバ・ハンドラの役割分担はプローバとテスタの違いとは?で整理しています。

同社の沿革や収益構造はアドバンテストとは?で掘り下げています。

規模で並べる|主要企業の比較

主要企業の直近の売上高を並べます。ただし決算期も通貨も異なるため、単純な順位づけはできません。規模感を掴むための参考としてご覧ください。

企業 国・地域 直近の売上高 決算期 主力
アドバンテスト 日本 1兆1,286億円 2026年3月期 テスタ
ディスコ 日本 4,368億円 2026年3月期 ダイシング、グラインダ
ASMPT シンガポール・香港 17.6億米ドル 2025年12月期 ボンディング全般
東京精密 日本 1,278億円(半導体部門) 2026年3月期 ダイシング、プローバ
Kulicke & Soffa 米国・シンガポール 6.54億米ドル 2025年9月期 ワイヤボンダ
Besi オランダ 5.91億ユーロ 2025年12月期 ボンディング特化
TOWA 日本 543億円 2026年3月期 モールド

並べてみると、アドバンテストが突出していることが分かります。そして残りの企業は、それぞれ得意な一点に集中しています。

前工程では総合メーカーが複数工程を押さえますが、後工程は専門特化型が並び立つ構造です。工程別のシェアは工程別・世界シェアまとめで詳しく扱っています。

日本勢の再編|ヤマハロボティクスの誕生

後工程装置の分野で、日本勢に大きな動きがありました。

ヤマハ発動機は2025年7月1日、傘下のヤマハロボティクスホールディングスが新川、アピックヤマダ、PFAを吸収合併し、ヤマハロボティクス株式会社として再編しました。

統合された各社の得意分野は次のとおりです。

  • 新川:ワイヤボンダ、ダイボンダ
  • アピックヤマダ:モールド装置、金型
  • PFA:カメラモジュールなどのFA装置

つまり接続・封止・組立という後工程の主要工程が、一つの会社に集まったことになります。

同社は半導体後工程製造装置事業で、2027年に500億円以上、2030年代初めに1,000億円の売上を目指すとしています。

この再編が示すのは、単一工程の装置だけでは戦いにくくなっているという現実です。先端パッケージでは複数の工程が密接に絡むため、まとめて提案できる体制が求められます。

境界が溶けている|前工程メーカーの参入

もう一つ、この分野を見るうえで欠かせない変化があります。

前工程の装置メーカーが、後工程領域に入ってきています。

理由は明快です。ハイブリッドボンディングやTSVといった先端パッケージ技術には、成膜、エッチング、CMP、洗浄といった前工程の技術がそのまま必要になるからです。

接着剤もはんだも使わず、平坦化した面どうしを直接つなぐ——この工程で求められるのは、まさに前工程の精度です。

結果として、CoWoSやチップレットの領域では、前工程メーカーと後工程メーカーが同じ土俵で競うようになりました。

「後工程装置メーカー」という区分自体が、いま揺らいでいます。この記事で挙げた企業一覧も、数年後には顔ぶれが変わっている可能性があります。

後工程装置ビジネスの3つの特徴

最後に、この分野に共通する構造を整理します。

①消耗品とセットで成り立つ

ブレード、金型、キャピラリ、テスト用インタフェースボード——後工程には消耗品が数多く存在します。

装置を売って終わりではなく、稼働する限り収益が生まれます。装置メーカーの業績を見るとき、消耗品の比率は重要な指標です。

②顧客の裾野が広い

前工程の顧客は、巨額の投資ができる限られた企業に絞られます。一方、後工程はOSATを含めて買い手が多く、規模もさまざまです。

それだけ景気変動の影響の受け方も異なります。

③受注高が業績に先行する

Besiの例が示すように、売上が横ばいでも受注が倍増していることがあります。

装置メーカーの現状を知るには、当期の売上より受注高と受注残高を見るほうが実態に近い——これは後工程に限らず装置業界に共通する見方です。

✍️ ひとこと

並べてみて意外だったのは、後工程装置で最大の企業がテスタの会社だったことです。組み立てる装置ばかりに目が向いていました。

作ったものを確かめる工程に、これだけの規模が集まっている。「ちゃんと動くと確認できて、はじめて製品になる」という当たり前のことが、数字になって表れているのだと感じます。

— semisouchi.com 編集室

よくある質問

後工程装置メーカーで世界最大はどこですか?

売上規模ではアドバンテスト(2026年3月期・1兆1,286億円)が突出しています。ただし同社の主力はテスタであり、組立装置に限れば顔ぶれは変わります。「後工程装置」にテストを含めるかどうかで答えが変わる点に注意が必要です。

なぜ後工程では日本企業が強いのですか?

切る・削る・封じるといった精密加工と金型の技術が土台にあるためです。ただし全領域で強いわけではなく、ボンディング装置では海外勢が主導しています。日本メーカー全体の位置づけは日本の半導体製造装置メーカー一覧をご覧ください。

OSATとは何ですか?

半導体の組立・検査を専門に受託する企業です。台湾のASE、米国のAmkor、中国のJCETなどが代表的で、後工程装置の大口の買い手でもあります。近年はファウンドリも先端パッケージ領域に進出しています。

前工程メーカーと後工程メーカーは競合しますか?

先端パッケージの領域では競合しつつあります。ハイブリッドボンディングやTSVでは前工程の技術が必要になるため、双方が同じ顧客に提案する場面が増えています。

まとめ

  • 後工程装置は前工程に比べて単価が低く台数が多い。顧客にOSATが加わり、買い手の裾野が広い
  • 工程ごとに主役企業が入れ替わる。総合型より専門特化型が並び立つ構造
  • 研削・ダイシングと封止は日本勢が主導、ボンディングは海外勢が主導
  • 売上規模で突出しているのはアドバンテスト(2026年3月期・1兆1,286億円)。テストを含めると後工程は決して小さな市場ではない
  • 2025年7月、新川・アピックヤマダ・PFAが統合してヤマハロボティクスが発足。単一工程では戦いにくくなっている
  • 先端パッケージを介して前工程メーカーが参入し、「後工程装置メーカー」という区分自体が揺らいでいる
  • 消耗品ビジネス、広い顧客層、受注先行——この3点がこの分野に共通する構造

後工程の工程そのものは半導体の後工程装置とは?、装置メーカー全体の順位は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026で解説しています。

参考・出典