半導体のテスト工程では、「テスタ」「プローバ」「ハンドラ」という3つの装置が登場します。どれもテストに関わる装置のため混同されやすく、とくにプローバとテスタの違いは分かりにくい部分です。

結論から言えば、この3つは役割が競合しておらず、組み合わせて使うものです。この記事では、それぞれの役割の違いを整理したうえで、意外と知られていないプローブカードの重要性、ウェハーテストと最終テストの違い、主要メーカーまで解説します。

テスタ・プローバ・ハンドラの役割分担

まず全体像を整理します。

装置 役割 ひとことで言うと
テスタ 電気信号を送り、応答が正しいか判定する 試験する装置
プローバ ウェハー上のチップ電極に針を当て、テスタとつなぐ つなぐ装置
ハンドラ 個片化されたチップをテスタへ搬送し、温度条件を与える 運ぶ装置

テストを試験にたとえるなら、テスタは問題を出して採点する試験官、プローバとハンドラは受験者を席まで案内する係にあたります。試験官がいても受験者が席に着けなければ試験は始まりませんし、案内だけでは採点はできません。どちらも必要です。

なお、プローバとハンドラは同時には使いません。ウェハーの状態で検査するときはプローバ、切り分けた後のチップを検査するときはハンドラを使います。

テスタとは

テスタは、チップに電気信号を入力し、返ってくる応答が設計どおりかを判定する装置です。英語では tester、テスト装置全般は test equipment と呼ばれます。

内部には多数の測定回路が搭載されており、決められた手順(テストプログラム)に沿って、膨大な項目を高速で確認していきます。「電源を入れて動くか」を見るだけでなく、規定の速度で動作するか、消費電力は範囲内か、といった細かな仕様を1つずつ検証します。

テスタは、対象とする製品によって大きく2つに分かれます。

  • SoC・ロジック用テスタ:機能が複雑な半導体向け。確認項目が多く、テストが長時間になりやすい
  • メモリ用テスタ:記憶素子向け。膨大な数のメモリセルを効率よく検査する能力が求められる

この分野は、日本のアドバンテストと米国のTeradyneによる二強構造です。

プローバとは

プローバ(ウェーハプローバ)は、ウェハーの状態のまま検査を行うために、チップの電極に針(プローブ)を正確に当てる装置です。英語では prober です。

1枚のウェハーには数百から数千個のチップが並んでいます。プローバはウェハーを載せたステージを動かし、1つのチップの電極に針を接触させ、テストが終わると次のチップへ移動する、という動作を繰り返します。

求められるのは、極めて高い位置決め精度です。電極のサイズは微細で、少しでもずれれば接触不良となり、良品を不良と誤判定してしまいます。針の当て方が強すぎれば電極を傷つけ、弱ければ接触が不安定になります。

東京エレクトロンは自社サイトで、プローバを世界1位の製品として公表しています。東京精密も主要メーカーの一社です。

ハンドラとは

ハンドラは、切り分けられた後の個片チップをテスタへ運び、試験が終わったチップを良品・不良品に仕分ける装置です。英語では handler です。

重要な役割として、温度条件を与えることがあります。半導体は実際の製品の中で、高温にも低温にもさらされます。そのため、常温だけでなく厳しい温度条件下でも仕様どおり動作するかを確認します。ハンドラはチップを目的の温度にしてからテスタに接続します。

バーンイン(エージング)装置

テストに関連する装置として、バーンイン装置(エージング装置)もあります。これは、チップに高温と電圧のストレスを一定時間加え続ける装置です。

目的は、使い始めてすぐ壊れる不良を、出荷前にあぶり出すことにあります。半導体には、初期の段階で故障が集中しやすいという性質があり、あらかじめ負荷をかけることで、そうした個体を取り除けます。

車載向けや産業用途など、高い信頼性が求められる製品で重視される工程です。装置そのものの構造はバーンイン装置とは?で扱っています。バーンインを含む信頼性試験の全体像は半導体の信頼性試験とは?で詳しく解説しています。SEAJの装置分類でも、エージング装置は検査用装置の中の独立した項目として位置づけられています。

見落とされがちな主役|プローブカード

プローバを理解するうえで欠かせないのが、プローブカードの存在です。

プローバは「針を当てる装置」ですが、その針そのものは装置に固定されているわけではありません。針を並べた交換式の部品が装着されており、これがプローブカードです。

プローブカードには、次のような特徴があります。

  • 製品ごとの専用品である:チップの電極配置に合わせて設計されるため、汎用品ではありません
  • 消耗する:針は接触を繰り返すうちに摩耗し、定期的な交換や整備が必要です
  • 高価である:先端品向けでは、1枚が非常に高額になります

つまり、プローバという装置を持っているだけでは検査できません。対象製品に合ったプローブカードがあって初めて成立します。

さらに重要なのが、同時に何個のチップを測定できるかという点です。1回の接触で多数のチップを同時に測定できれば、テストにかかる時間は大幅に短縮されます。プローブカードの設計は、テストコストを直接左右する要素なのです。

主要なメーカーには、米国のFormFactor、日本の日本電子材料やマイクロニクスなどがあります。装置メーカーとは別の企業が担っている領域です。

針の方式、接触の物理的な難しさ、主要メーカーの勢力図はプローブカードとは?で詳しく解説しています。

ウェハーテストと最終テストの違い

テストは、製造工程の中で2回に分けて行われるのが一般的です。

比較項目 ウェハーテスト 最終テスト
タイミング 前工程の完了後、切り分ける前 パッケージに封止した後
対象 ウェハー上のチップ 製品の形になったチップ
装置構成 テスタ+プローバ テスタ+ハンドラ
目的 不良チップを早く見つけ、無駄な後工程を避ける 出荷品質の最終確認

なぜ2回行うのか。理由はコストにあります。

不良チップをそのまま後工程へ流せば、切断・接合・封止といった加工費が丸ごと無駄になります。ウェハーの段階で不良と分かっていれば、そのチップにはパッケージ費用をかけずに済みます。

一方、パッケージ工程でも不良は発生しうるため、完成後にもう一度確認する必要があります。役割が違うため、両方が必要なのです。

なぜテストコストが問題になるのか

近年、テスト工程の負担は増す一方です。理由は主に2つあります。

①チップが複雑になり、テスト時間が伸びている
AI向けの半導体は回路規模が大きく、確認すべき項目も膨大です。1個あたりのテスト時間が伸びれば、同じ数を検査するのにより多くのテスタが必要になります。テスト装置の需要が伸びている直接的な要因です。

②積層する前に良品を確定させる必要がある
HBMのようにチップを積み重ねる製品では、1つでも不良が混じると製品全体が不良になります。そのため、組み合わせる前の段階で良品を保証することが求められます。この考え方はKGD(Known Good Die)と呼ばれ、検査装置の重要性が高まった背景にあります。くわしくは半導体検査装置とは?種類と世界シェアで解説しています。

テスト工程は製品に機能を追加するわけではないため、コストとしては削りたい部分です。しかし品質を落とすわけにはいきません。そこで同時測定数を増やす、テストプログラムを最適化するといった工夫で、1個あたりのコストを下げる取り組みが続けられています。

主要メーカー

テスト関連の装置は、日本企業の存在感が大きい分野です。

分類 主要メーカー
テスタ アドバンテスト(日本)、Teradyne(米国)
プローバ 東京エレクトロン(日本)、東京精密(日本)
ハンドラ アドバンテスト(日本)、Cohu(米国)ほか
プローブカード FormFactor(米国)、日本電子材料、マイクロニクス(日本)

アドバンテストの2026年3月期の売上高は1兆1,286億円で、前年比44.7%増と大きく伸び、初めて1兆円を超えました。AI向け半導体のテスト需要が業績を押し上げた形です。同社は自社のIR資料でテスタ市場におけるシェアを公表しており、近年上昇傾向にあります。この企業の成り立ちと事業構造はアドバンテストとは?で詳しく解説しています。

東京精密の2026年3月期は、全社売上高1,668億円のうち半導体製造装置部門が1,278億円(前期比12.7%増)を占めました。HBM向けのプローバや、AIパッケージング工程で使われるグラインダが好調に推移したと説明されています。

各社の売上規模の比較は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026をご覧ください。

✍️ ひとこと

テスタ、プローバ、ハンドラ。名前が似ていて混乱しますが、役割で見ると驚くほどはっきり分かれています。

主役に見えないプローブカードが実は要である、というところに、この業界らしさを感じました。目立たない部品が全体を左右する例は、他の工程にもたくさんあります。

— semisouchi.com 編集室

よくある質問

プローバ・テスタは英語で何と言いますか?

prober(プローバ)、tester(テスタ)、handler(ハンドラ)、probe card(プローブカード)です。ウェハーの状態で行う検査は wafer test や probing、完成後の検査は final test と呼ばれます。

電気工事などで使う「テスター」とは違うのですか?

まったく別のものです。一般に「テスター」と呼ばれる回路計は、電圧や抵抗を測る手持ちの測定器です。半導体のテスタは、チップの機能を自動で検証する大型の装置で、価格も規模も大きく異なります。

プローバとテスタは同じメーカーが作っているのですか?

別々であることが一般的です。テスタはアドバンテストやTeradyne、プローバは東京エレクトロンや東京精密が主力としており、両者を組み合わせて使います。

パワー半導体のテストも同じ装置で行うのですか?

基本的な考え方は同じですが、扱う電圧や電流が大きく異なるため、専用の対応が必要になります。高電圧・大電流に対応した装置やプローブカードが用いられます。

まとめ

  • テスタは「試験する装置」、プローバは「つなぐ装置」、ハンドラは「運ぶ装置」で、役割が異なる
  • ウェハー状態の検査はテスタ+プローバ、個片化後の検査はテスタ+ハンドラの組み合わせ
  • プローバには製品ごとに専用設計されたプローブカードが必要で、同時測定数がテストコストを左右する
  • ウェハーテストは無駄な後工程を避けるため、最終テストは出荷品質の保証のために行われる
  • AI半導体の複雑化とHBMの普及により、テスト工程の重要性が高まっている

検査装置全体の分類については半導体検査装置とは?種類と世界シェア、装置全体の位置づけは半導体製造装置とは?種類と役割を工程順にわかりやすく解説をご覧ください。

参考・出典