ウェハーの上に回路が完成しても、そのままでは製品として使えません。チップを切り出し、基板につなぎ、樹脂で守り、動作を確認する。この一連の工程が後工程です。

かつて後工程は「前工程に比べて技術的な難度が低い」と見られていました。しかし現在、その評価は完全に変わっています。チップの性能をパッケージが左右する時代になったためです。

この記事では、後工程の流れを工程順に整理し、各工程で使われる装置、日本企業が強い理由、そして後工程が主役に変わった背景までを解説します。

後工程とは

後工程は、回路が完成したウェハーを個々のチップに分け、パッケージに封止して製品に仕上げる工程です。英語では back-end process、または assembly and test と呼ばれます。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)の装置分類では、後工程で使われる装置は「組立用装置」としてまとめられ、ダイシング装置、ボンディング装置、パッケージング装置、検査評価装置に区分されています。このうち封止後のパッケージ検査についてはパッケージ検査とは?X線検査・ボンドプルテスト・気密性試験で解説しています。

前工程との違いについては半導体の前工程と後工程の違いでくわしく解説しています。この記事では、後工程の中身を工程順に見ていきます。

後工程の流れ【工程順】

製品の種類によって差はありますが、代表的な流れは次のとおりです。

順序 工程 内容 主な装置
① バックグラインド ウェハーの裏面を削って薄くする グラインダ
② ダイシング ウェハーをチップごとに切り分ける ダイシング装置
③ ダイボンディング チップを基板やリードフレームに固定する ダイボンダー
④ ワイヤボンディング チップと基板の電極を金属線でつなぐ ワイヤボンダー
⑤ モールド 樹脂で封止し、外部の衝撃や湿気から保護する モールド装置
⑥ マーキング・個片化 品名を刻印し、製品ごとに切り離す マーキング装置
⑦ 最終テスト 電気的に動作を確認する テスタ、ハンドラ

各工程で使われる装置

バックグラインダ|実は最初にウェハーを削る

意外に思われるかもしれませんが、後工程の最初は「切る」ではなく「薄くする」です。

ウェハーは前工程で扱う際の強度を確保するため、比較的厚い状態で作られます。しかし製品として使うには薄いほうが有利です。特にチップを積み重ねる製品では、厚いままでは重ねられません。そこで裏面を研削して薄くします。

HBMのようにチップを何段も積む製品では、極めて薄い状態まで削る必要があります。薄くなるほどウェハーは割れやすく、反りも生じるため、この工程の難度は年々上がっています。

薄くしてから切ると割れやすいという問題に対しては、先に表面から溝を入れておき、その後に裏面を削ることで自然に個片化するという手法も用いられます。工程の順序そのものを変えることで、薄いチップを扱えるようにした発想です。

ダイシング装置|ウェハーをチップに切り分ける

1枚のウェハーに並んだ数百から数千個のチップを、1個ずつに切り分ける装置です。極薄のブレードを高速回転させて切断する方式が主流ですが、レーザーを使う方式もあります。

切断面の欠けはチップの強度低下や不良につながるため、精度が求められます。この分野ではディスコが世界的に高いシェアを持ちます。くわしくはダイシング装置とは?をご覧ください。

ダイボンダー|チップを固定する

切り出したチップを、基板やリードフレームの所定の位置に接着する装置です。位置精度と速度の両立が求められます。

先端パッケージでは、複数のチップを高精度に並べて配置する必要があり、要求される精度が格段に高くなっています。

ワイヤボンダー|電極どうしをつなぐ

チップの電極と基板の電極を、金や銅の細い線でつなぐ装置です。線の直径は非常に細く、1個のパッケージで数百本を接続することもあります。

近年は、細線を使わずにチップどうしを直接接合する手法も広がっており、この領域は技術的な転換期にあります。くわしくはダイボンダーとワイヤボンダーの違いとは?で解説しています。

モールド装置|樹脂で封止する

チップを樹脂で覆い、湿気や衝撃、汚染から保護する装置です。方式は大きく2つあります。

  • トランスファモールド:溶かした樹脂を金型に流し込む従来からの方式
  • コンプレッションモールド:先に樹脂を供給し、圧縮して成形する方式。大型化・薄型化した先端パッケージに適する

封止装置ではTOWAが世界トップシェアを持ちます。くわしくはモールド装置とは?で解説しています。くわしくはモールド装置とは?半導体の封止工程とTOWAが強い理由で解説しています。

最終テスト

完成した製品が仕様どおり動作するかを電気的に確認します。テスタ、ハンドラといった装置が使われます。くわしくはプローバとテスタの違いとは?をご覧ください。

後工程が「主役」に変わった理由

後工程の位置づけは、この10年ほどで大きく変わりました。

かつて半導体の性能向上は、微細化によって実現されてきました。トランジスタを小さくすれば、同じ面積に多く詰め込め、速度も上がる。前工程の進歩がすべてを決めていた時代です。

しかし微細化のペースは鈍り、コストも急増しました。そこで注目されたのが、「1つのチップを小さくする」のではなく「複数のチップを賢く組み合わせる」というアプローチです。

役割ごとに分けたチップをつなぐチップレット、メモリを積層して帯域を稼ぐHBM、それらを高密度に配置する2.5D/3D実装。いずれも後工程の領域にあります。

AI向け半導体では、この組み合わせ方が性能を大きく左右します。「どれだけ微細に作れるか」から「どれだけ上手く組み合わせられるか」へ、競争の焦点が移ったのです。

前工程の技術が後工程に流れ込んでいる

さらに重要な変化として、後工程で前工程の装置が使われるようになったことが挙げられます。

チップどうしを直接接合するハイブリッドボンディングでは、接合面がナノレベルで平坦である必要があり、前工程で使われるCMPが不可欠です。チップを貫通する電極(TSV)の形成には、エッチングや成膜の技術が使われます。

その結果、前工程と後工程の境界は曖昧になりつつあります。両者の中間を中工程(ミドルエンド)と呼ぶ言い方が広まったのも、この変化を反映したものです。その象徴がハイブリッドボンディングです。CMPについてはCMP装置とは?研磨の仕組みと世界シェアで解説しています。

先端パッケージの主要技術

技術 概要
チップレット 機能ごとに分けた複数のチップを組み合わせて1つの製品にする
HBM DRAMを積層し、広い帯域を確保する
2.5D実装 チップを中間基板の上に並べて配置し、高速に接続する
3D実装 チップを垂直に積み重ね、貫通電極で接続する
ハイブリッドボンディング 電極と絶縁膜を同時に直接接合し、微細で高密度な接続を実現する
ファンアウト チップより広い面積に配線を引き出し、端子数を増やす

世界シェアと主要メーカー

後工程装置は、日本企業の存在感が大きい分野です。

企業 国 強みのある装置
ディスコ 日本 ダイシング装置、グラインダ
TOWA 日本 モールド(封止)装置
東京精密 日本 ダイシング装置、グラインダ
ASM Pacific Technology シンガポール・香港 ダイボンダー、ワイヤボンダー
Besi オランダ ボンディング装置、ハイブリッドボンディング
Kulicke & Soffa 米国・シンガポール ワイヤボンダー
アドバンテスト 日本 テスタ、ハンドラ

ディスコの2026年3月期の売上高は4,368億円で前期比11.1%増、初めて4,000億円を超えました。HBM向けにチップを薄く削り、精密に切断する需要が業績を押し上げています。

TOWAの2026年3月期は、売上高543億円と過去最高を更新した一方、営業利益は69億円で前期比22.1%減でした。次世代の圧縮成形装置の初回納入に伴う一時的なコストや研究開発費の増加が要因とされています。

ただし注目すべきは受注です。同期の受注高は595億円で前期比25.6%増と過去2番目の水準に達し、AI・データセンター向けを中心に受注が加速しています。装置メーカーを見るときは、当期の利益だけでなく受注高や受注残高を確認すると、先の需要が読み取れます。

各社の売上規模の比較は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026をご覧ください。

後工程を担う企業|OSATという存在

後工程は、半導体メーカー自身が行うとは限りません。組立・検査を専門に受託する企業があり、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)と呼ばれます。台湾のASE、米国のAmkor、中国のJCETなどが代表的です。

近年は、先端パッケージの重要性が高まったことで、前工程を担うファウンドリが後工程領域にも進出しています。高度なパッケージ技術が製品の競争力に直結するため、前工程から一貫して手がける動きが強まっているのが現状です。

日本では、パッケージ基板の分野でイビデンや新光電気工業が高い技術力を持っています。

後工程の装置をどの企業が担っているかは、後工程装置メーカー一覧で工程別に整理しています。

✍️ ひとこと

かつて後工程は「付け足し」のように見られていた時期がありました。それが今では、性能を左右する主戦場になっています。

光の当たらなかった場所が、あるとき主役になる。技術の世界では、こういう逆転がときどき起こります。

— semisouchi.com 編集室

よくある質問

後工程は英語で何と言いますか?

back-end process、または assembly and test(A&T)です。パッケージング工程は packaging、受託企業はOSATと呼ばれます。

後工程の市場規模はどのくらいですか?

SEMIの予測では、2026年の組立・パッケージング装置は67億ドル(前年比9.6%増)、テスト装置は153億ドル(同31.0%増)とされています。前工程装置(1,439億ドル)と比べると金額は小さいものの、テスト装置は前工程を上回る成長率が見込まれています。市場全体の推移は半導体製造装置の市場規模と今後の予測で解説しています。

なぜ後工程装置は日本企業が強いのですか?

切る、削る、接合する、成形するといった精密な機械加工の技術が中心となる領域だからです。長年の蓄積が求められ、装置を替えると品質が変わるため、実績のあるメーカーが選ばれ続けます。

後工程は前工程より簡単なのですか?

現在ではそうとは言えません。先端パッケージでは、異なる材料を組み合わせて熱や応力に耐えさせる必要があり、接合の精度も前工程に迫る水準が求められます。求められる技術の性質が違う、と捉えるのが実態に近い理解です。

まとめ

  • 後工程は「薄くする→切る→固定する→つなぐ→封止する→検査する」という流れで進む
  • 最初の工程は切断ではなく、ウェハーを薄くするバックグラインド
  • 微細化の鈍化により、チップレットやHBMなど「組み合わせる技術」が競争の焦点になった
  • ハイブリッドボンディングやTSVでは前工程の装置が使われ、両者の境界は曖昧になっている
  • ディスコ、TOWA、東京精密など日本企業が強い分野
  • 装置メーカーの実力を見るには、売上だけでなく受注高にも注目するとよい

個別の装置については今後の記事でくわしく解説していきます。装置全体の位置づけは半導体製造装置とは?種類と役割を工程順にわかりやすく解説をご覧ください。

参考・出典