半導体製造装置の市場規模と今後の予測|2025年実績と2028年までの見通し
半導体製造装置の市場は、この数年で急速に拡大しています。2025年の世界販売額は1,351億ドルに達し、過去最高を更新しました。
ただし、市場規模の数字は出典によってばらつきがあり、さらに予測は頻繁に書き換えられています。数字だけを見ても実態はつかめません。
この記事では、最新の市場規模と推移を整理したうえで、工程別・地域別の内訳、日本の位置づけ、そして予測がどう修正されてきたかまでを解説します。
世界の半導体製造装置市場規模【最新】
業界団体SEMIの発表によると、2025年の世界の半導体製造装置販売額は1,351億ドルで、前年の1,171億ドルから15%増加し、過去最高を更新しました。
さらに2026年7月に発表された最新予測では、2026年の販売額は1,659億ドル(前年比23.2%増)に達する見込みです。内訳は次のとおりです。
| 区分 | 2026年予測 | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 前工程(ウェーハファブ装置) | 1,439億ドル | +23.1% | 約87% |
| テスト装置 | 153億ドル | +31.0% | 約9% |
| 組立・パッケージング装置 | 67億ドル | +9.6% | 約4% |
| 合計 | 1,659億ドル | +23.2% | 100% |
市場規模の推移
過去からの流れを見ると、成長の勢いがよく分かります。
| 年 | 販売額 | 状況 |
|---|---|---|
| 2021年 | 1,026億ドル | 実績 |
| 2022年 | 1,076億ドル | 実績・当時の過去最高 |
| 2023年 | 1,063億ドル | 実績・前年から減少 |
| 2024年 | 1,171億ドル | 実績・10%増 |
| 2025年 | 1,351億ドル | 実績・15%増で過去最高 |
| 2026年 | 1,659億ドル | 予測・23.2%増 |
| 2028年 | 2,295億ドル | 予測・5年連続の成長 |
注目したいのは2023年の落ち込みです。半導体産業には需給の波(シリコンサイクル)があり、市場は一直線に伸びるわけではありません。実際、2023年は前年を下回りました。
その後、AI向けの投資が本格化したことで、2024年から様相が変わります。2028年には2,295億ドルと、2023年の2倍以上に達する見通しです。
工程別に見る内訳
統計を読むうえで、まず押さえておきたい用語があります。WFE(Wafer Fab Equipment)です。
直訳すれば「ウェーハ工場の装置」で、露光・成膜・エッチング・洗浄・CMPなど前工程で使われる装置の総称を指します。市場統計では、このWFEが1つの区分として扱われ、テスト装置、組立・パッケージング装置と並べて集計されるのが一般的です。
業界のニュースで「WFE市場は◯%成長」という表現が出てきたら、それは前工程装置の話だと考えて差し支えありません。
金額で見ると、前工程装置が全体の約87%を占めます。露光、成膜、エッチング、洗浄といった装置が高額であることに加え、工程数そのものが多いためです。
一方、伸び率で見ると異なる景色が見えてきます。2025年実績のセグメント別の伸びは次のとおりでした。
- ウェーハプロセス用処理装置:12%増
- その他の前工程装置:13%増
- テスト装置:55%増
- 組立・パッケージング装置:21%増
テスト装置の55%増が突出しています。AI向け半導体はチップが複雑で、検査に時間がかかります。さらにHBMのようにチップを積み重ねる製品では、組み合わせる前に良品を確定させる必要があり、テスト需要が急増しました。
組立・パッケージング装置の21%増も、前工程を上回る伸びです。「前工程が大きい」という構図は変わらないものの、成長の主役は後工程側に移りつつあるといえます。検査装置については半導体検査装置とは?種類と世界シェア、後工程については半導体の後工程装置とは?で解説しています。
地域別の市場
装置がどこで買われているかを見ると、産業の地図が分かります。2025年の主要地域の投資額は次のとおりです。
| 地域 | 2025年の投資額 | 備考 |
|---|---|---|
| 中国 | 493億ドル | 最大市場 |
| 台湾 | 315億ドル | 過去最高 |
| 韓国 | 258億ドル | メモリ投資が中心 |
中国が最大の市場である点は、意外に思われるかもしれません。中国は最先端の装置を輸入できない状況にありますが、それでも成熟世代の生産能力を積極的に増強しており、装置の購入額では世界最大となっています。
台湾は先端ロジックの拠点として、韓国はメモリの拠点として投資が続いています。「どの地域が買っているか」は、その国がどの分野に賭けているかを映す指標でもあります。
「日本市場」と「日本製装置」は別物
日本に関する数字を見るときに、混同しやすい点があります。
- 日本市場:日本国内の工場が購入した装置の金額
- 日本製装置:日本メーカーが世界中に販売した装置の金額
この2つはまったく別の数字です。日本の装置メーカーは輸出比率が高いため、日本製装置の販売額は、日本市場の規模を大きく上回ります。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の2026年7月の予測によれば、2026年度の日本製半導体製造装置の販売額は6兆5,502億円(前年度比26%増)となる見込みです。
記事やニュースで「日本の市場規模」と書かれていても、どちらを指しているのか確認する必要があります。
予測は頻繁に上方修正されている
ここが、市場規模の情報を扱ううえで最も重要な点です。
SEMIの予測は年に複数回発表され、そのたびに数字が変わります。2026年の市場規模がどう予測されてきたかを並べると、変化の大きさが分かります。
| 予測の発表時期 | 2026年の予測値 |
|---|---|
| 2024年末 | 1,390億ドル |
| 2025年末 | 1,450億ドル |
| 2026年央(最新) | 1,659億ドル |
わずか1年半で、予測値は約270億ドル引き上げられました。実績についても、2025年は当初1,255億ドルと見込まれていましたが、最終的には1,351億ドルとなっています。
理由は、AI関連の投資が想定を超え続けたことです。予測が外れたというより、市場が予測を追い越していったといえます。
したがって、市場規模を調べるときは「いつ時点の予測か」を必ず確認してください。半年前の記事に載っている数字は、すでに古くなっている可能性があります。逆に、上方修正が続いているかどうかを見ることで、業界の勢いを読み取ることもできます。
市場を動かす4つの要因
①AI関連投資
現在の成長を牽引している最大の要因です。AI向けの先端ロジック、HBMを含むメモリ、そしてそれらを検査・実装する装置に投資が集中しています。
②シリコンサイクル
半導体には、需要と供給のバランスによる好不況の波があります。装置は設備投資の対象であるため、半導体本体の市況より振れ幅が大きくなるのが特徴です。2023年の落ち込みはその典型でした。
③地政学と政策
各国が半導体産業への補助金を投じており、新工場の建設が装置需要を生んでいます。同時に、輸出規制は特定地域向けの販売に影響します。市場は技術と経済だけでなく、政策にも大きく左右されます。
④中国の国産化
輸出規制により先端装置を輸入できない中国では、国産装置への置き換えが進められています。中国メーカーの成長は、成熟世代の市場における競争環境を変えつつあります。
なぜ装置市場は半導体市場より激しく動くのか
半導体製造装置の市場には、半導体そのものの市場とは異なる性質があります。好況時にはより大きく伸び、不況時にはより深く落ち込むという点です。
理由は、装置が「製品」ではなく「設備投資」だからです。
半導体メーカーは、需要が強く工場の稼働率が高いとき、増産のために装置を発注します。しかし需要が弱まると、まず削られるのが設備投資です。今ある装置で作れる範囲に生産を抑えれば、新たな装置は必要ありません。発注はゼロにもなり得ます。
さらに、時間差も生じます。工場の建設には数年を要し、投資を決めてから装置が搬入されるまでにも期間があります。そのため装置市場は、半導体市場の動きを増幅しながら、少し遅れて反映するという動き方をします。
2023年に装置市場が前年を下回った一方、2024年以降に急回復しているのは、この性質がよく表れた例です。装置メーカーの業績を見るときは、足元の売上だけでなく、受注高や受注残高といった先行指標を確認すると、次の局面が読み取りやすくなります。
調べていて一番印象的だったのは、市場予測が何度も上方修正されていることでした。専門機関でさえ先を読み切れていない。
数字は正確そうに見えますが、あくまでその時点での見立てです。だからこそ、数字そのものより「なぜ動いたか」を追うほうが役に立ちます。
— semisouchi.com 編集室
よくある質問
市場規模のデータはどこで確認できますか?
世界全体の統計はSEMI、日本製装置および日本市場の統計はSEAJが公表しています。SEMIは年に複数回の予測を、SEAJは年2回(1月・7月)の需要予測と月次の販売高速報を発表しています。
なぜ資料によって数字が違うのですか?
集計範囲、対象期間(暦年か年度か)、調査機関の違いによります。特に「暦年」と「年度」の違いは大きく、日本企業の決算に基づく数字と、世界市場の暦年統計は単純に比較できません。
装置市場は半導体市場とどう連動しますか?
装置は設備投資であるため、半導体メーカーの業績や先行きの見通しに反応します。半導体本体の需要が回復してから装置投資が動くまでには時間差があり、逆に減速局面では投資が急速に絞られます。装置市場は半導体市場より変動が激しいと理解しておくとよいでしょう。
今後も成長は続きますか?
SEMIは2028年まで5年連続の成長を見込んでいます。ただし予測は状況に応じて修正されるため、定期的な確認が必要です。
まとめ
- 2025年の世界市場は1,351億ドルで過去最高、2026年は1,659億ドルの予測
- 金額では前工程装置が約87%を占めるが、伸び率ではテスト装置が突出(2025年実績で55%増)
- 地域別では中国が最大市場、次いで台湾・韓国
- 「日本市場」と「日本製装置」は別の数字で、後者は2026年度に6兆5,502億円の見込み
- 予測は繰り返し上方修正されており、数字を見るときは発表時期の確認が必須
- 2023年には減少しており、市場は一直線には伸びない
装置の種類ごとの解説は半導体製造装置とは?種類と役割を工程順にわかりやすく解説、メーカー別の規模は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026をご覧ください。
参考・出典
- SEMI「世界半導体製造装置販売額は2025年に15%増の1,350億ドルへ到達」(2026年4月8日)
- SEMI「Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028」(2026年7月14日)
- SEMI「世界半導体製造装置の2025年末市場予測発表」(2025年12月16日)
- SEMI「世界半導体製造装置の2025年央市場予測発表」(2025年7月24日)
- SEAJ「半導体・FPD製造装置 需要予測(2026年度〜2028年度)」(2026年7月2日発表・PDF)