欠陥検査装置は、ウェハーのどこに異常があるかを教えてくれます。ただし教えてくれるのは座標だけです。

そこに何があるのか——異物なのか、傷なのか、パターンの欠けなのか。それを確かめるのがレビューSEMです。

ここで素朴な疑問が浮かびます。最初から全部SEMで見ればいいのではないか。

この記事では、その問いに数字で答えるところから始めて、レビューSEMの役割、座標を合わせる難しさ、電子源の進化までを解説します。検査装置そのものはウェハー欠陥検査装置の仕組みで扱っています。

なぜ全面をSEMで見ないのか

計算してみると、答えは明白です。

直径300mmのウェハーの面積は、およそ次のようになります。

π × 150² = 約70,686 mm²

一方、SEMが一度に見る範囲は極めて狭いものです。仮に10マイクロメートル四方とすると、その面積は0.0001mm²にすぎません。

全面を埋め尽くすには、何回の撮像が必要でしょうか。

70,686 ÷ 0.0001 = 約7億回

1回1秒で撮れたとしても、7億秒かかります。年に直すと——

約22年

ウェハー1枚を見終える前に、その技術世代が終わります。

だからSEMで全面を見るという選択肢は、最初から存在しません。広く速く探す装置と、狭く詳しく見る装置を分ける——これがこの分野の大前提です。

分業の構造

実務は3つの段階に分かれます。

段階 問い 装置 速さと詳しさ
①検査 どこにあるか 欠陥検査装置 広く・速く・粗く
②レビュー 何があるか レビューSEM 狭く・遅く・詳しく
③分類 なぜ起きたか 解析ソフト データの集約

検査装置は主に光を使い、ウェハー全面を短時間で走査します。光では正体まで分かりませんが、「ここが周囲と違う」という位置は分かります。

その座標リストを受け取り、1点ずつ電子顕微鏡で拡大するのがレビューSEMの役割です。

サンプリングという割り切り

ここでもうひとつ、現実的な制約があります。

検査装置は1枚のウェハーから数千から数万個の欠陥座標を出すことがあります。これを全部レビューできるでしょうか。

1点あたり10秒で観察できたとして計算します。

欠陥の数 必要な時間
100個 約17分
1,000個 約2.8時間
10,000個 約28時間

1万個を全部見れば、丸一日以上かかります。その間、装置は次のウェハーを処理できません。

そこで一部を抜き出して見るという運用になります。数十個から数百個を選び、そこから全体を推し量ります。

どう選ぶかが結果を左右する

問題は、選び方によって見える景色が変わることです。

  • 大きい欠陥ばかり見れば、微小な欠陥の傾向を見落とす
  • ウェハー中心ばかり見れば、外周特有の問題に気づかない
  • 数の多い種類ばかり見れば、少数だが致命的な欠陥を取りこぼす

そのため、サイズや位置、検査装置が付けた特徴量に応じてまんべんなく散らばるように選ぶ工夫がなされます。「全部見られない」という制約が、サンプリング設計という技術を生んでいます。

座標を合わせるという難題

見落とされがちですが、実務上とても厄介な問題があります。

検査装置とレビューSEMは、別の装置です。

検査装置が「ここ」と示した座標へ、レビューSEMが移動する。しかし両者の座標系は完全には一致しません。ウェハーの置き方、機械の癖、熱による伸び——わずかなずれが積み重なります。

ここで先ほどの数字が効いてきます。SEMの視野は10マイクロメートル程度です。座標が5マイクロメートルずれれば、欠陥は視野の端へ移動し、10マイクロメートルずれれば画面から消えます。

そのため、次のような工夫が行われます。

  • ウェハー上の目印を使って座標系を較正する
  • まず低倍率で撮り、欠陥を見つけてから拡大する
  • 周囲のパターンと照合して位置を補正する

「行けば見える」わけではない。座標を渡す側と受け取る側の連携そのものが、この工程の技術になっています。

何を見分けているのか

レビューSEMが確認するのは、欠陥の正体です。代表的な分類を挙げます。

種類 中身 疑われる原因
異物(パーティクル) 付着した粒子 搬送系、装置内の部材、環境
スクラッチ 擦り傷 研磨、搬送時の接触
パターン欠陥 回路の欠け・つながり 露光、エッチング
残渣 取り切れなかった材料 洗浄、エッチング
ボイド 膜の中の空洞 成膜、埋め込み

種類が分かれば、どの工程を疑うべきかが絞れます。異物が急に増えたなら環境や装置内部材の消耗、パターン欠陥なら露光やエッチングの条件——という具合です。

レビューSEMは観察装置ですが、実質的には原因を突き止めるための道具です。

電子源の進化|CFEとTFE

レビューSEMの性能を決めるのは、電子をどう発生させるかです。

従来広く使われてきたのは熱電界放出(TFE)という方式です。これに対し、近年注目されているのが冷陰極電界放出(CFE)です。

アプライドマテリアルズは、自社のCFE技術について次のように説明しています。

  • 室温で動作し、より細く、電子の多いビームを作れる
  • 従来のTFEと比べ、画像の分解能を最大50%向上
  • 同じく撮像速度を最大10倍に
  • サブナノメートルの分解能で、埋もれた微小欠陥を捉えられる

ここで重要なのは、分解能と速度が同時に上がっている点です。

通常、細かく見ようとすれば時間がかかります。ところが電子源そのものを変えると、この関係を崩せます。ビームが細く、かつ電子の量が多ければ、短い時間で鮮明な像が得られるためです。

同社は最新のレビューシステムについて、こうした技術により従来の最先端手法と比べ最大3倍速く欠陥を分類できるとしています。

先ほど「1点10秒」で計算しましたが、この速度が上がれば、見られる欠陥の数が増えます。サンプリングの精度が上がり、判断の確からしさも上がります。速さは、そのまま情報量なのです。

自動欠陥分類(ADC)

撮った画像は、誰かが見て種類を判断しなければなりません。

かつては人が目で見て分類していました。しかし1日に何千枚もの画像が出てくるようになると、それでは追いつきません。判断のばらつきも問題になります。

そこで自動欠陥分類(ADC:Automated Defect Classification)が使われます。画像から特徴を取り出し、種類ごとに仕分ける仕組みです。近年は機械学習の活用が進んでいます。

ただし万能ではありません。

  • 学習していない未知の欠陥は正しく分類できない
  • 新製品の立ち上げ時は、そもそも学習データが少ない
  • 珍しいが重大な欠陥ほど、データが集まりにくい

数が多いものほど自動化しやすく、重大なものほど自動化しにくい。この非対称性があるため、人による確認は今も残ります。

組成まで調べる

形を見ても、正体が分からないことがあります。「粒子があるのは分かったが、何の粒子なのか」という場面です。

そこで、電子線を当てたときに出るX線を分析し、元素の組成を調べる機能が併用されます。

組成が分かれば、発生源の推定は一気に進みます。鉄が出れば金属部品、フッ素が出ればプロセスガスの残り、といった具合です。形だけでは辿り着けない原因に、材質から迫ることができます。

この元素分析の原理と、測定範囲に関する注意点はEDXとは?で詳しく解説しています。

立体的な形状を捉える手法については傾斜SEM(Tilt SEM)とは?で扱っています。

CD-SEMとの違い

同じSEMでも、CD-SEM(測長SEM)とは役割がまったく違います。

CD-SEM レビューSEM
目的 寸法を測る 正体を見る
見る場所 あらかじめ決めた点 検査装置が示した座標
求められる性能 繰り返し測って同じ値が出ること 小さなものを鮮明に写すこと
出力 数値 画像と分類

CD-SEMは正常なものを測る装置、レビューSEMは異常なものを見る装置といえます。求められる性能の方向が異なるため、同じ電子顕微鏡でも設計が分かれます。

表面からでは正体が分からない場合、断面を出して確認します。断面SEMとは?をご覧ください。

主要メーカー

レビューSEMは、限られた企業が手がけています。

企業 国 備考
アプライドマテリアルズ 米国 SEMVisionシリーズ。CFE技術を展開
日立ハイテク 日本 測長SEMと並びレビューSEMを展開
KLA 米国 検査装置と組み合わせた提案

興味深いのは、検査装置に強い企業と、電子顕微鏡に強い企業の両方がいることです。座標を出す側と、その座標へ行く側。どちらの立場からも、この市場に入ることができます。

工程別の企業配置は工程別・世界シェアまとめで解説しています。

✍️ ひとこと

計算してみて驚いたのは、ウェハー全面をSEMで見ると22年かかることでした。だから分業する。理屈ではなく、数字がそう決めていました。

そして「全部は見られない」という制約が、サンプリングをどう設計するかという技術を生んでいる。限界があるからこそ工夫が生まれる——そういう構図が、この分野にはよく現れます。

— semisouchi.com 編集室

よくある質問

レビューSEMと欠陥検査装置は何が違いますか?

検査装置はウェハー全面を走査して欠陥の位置を洗い出し、レビューSEMはその座標へ移動して正体を拡大観察します。前者は広く速く、後者は狭く詳しく見る役割分担です。

なぜ検査装置だけで正体が分からないのですか?

全面を短時間で見るために低い倍率で走査しており、微小な欠陥の形状まで判別できないためです。分解能を上げれば時間がかかり、全面走査が成立しなくなります。

すべての欠陥をレビューするのですか?

いいえ。1点10秒でも1万個で約28時間かかるため、数十から数百個を抜き出して観察します。サイズや位置が偏らないように選ぶことが重要になります。

CFEとTFEはどう違いますか?

電子の出し方が異なります。アプライドマテリアルズによれば、CFEは室温で動作してより細く電子の多いビームを作れ、従来のTFEと比べ分解能を最大50%、撮像速度を最大10倍に高められるとされています。

自動欠陥分類は人の判断を置き換えましたか?

完全には置き換わっていません。数の多い定型的な欠陥は自動化しやすい一方、学習データの少ない未知の欠陥や新製品の立ち上げ時は、人の確認が必要になります。

まとめ

  • 検査装置が出すのは座標だけで、欠陥の正体はレビューSEMが確認する
  • 300mmウェハー全面をSEMで見ると約7億視野、1視野1秒でも約22年かかる。だから検査とレビューを分ける必然性がある
  • 1点10秒でも1万個なら約28時間。全数は見られないためサンプリングが前提になる
  • 選び方が偏ると傾向を見誤るため、サイズや位置が散らばるように抽出する設計が要る
  • 検査装置とレビューSEMは別装置で座標系がずれる。視野10μmに対し数μmのずれで欠陥は画面から消える
  • 欠陥の種類が分かれば原因工程を絞れる。レビューSEMは実質的に原因究明の道具である
  • 電子源の進化が効いており、CFEはTFE比で分解能を最大50%、撮像速度を最大10倍に高めるとされる
  • 速さは情報量に直結する。速ければ見られる欠陥が増え、判断の確からしさが上がる
  • 自動分類は進んだが、数の多い欠陥ほど自動化しやすく、重大で珍しい欠陥ほど自動化しにくい

検査装置の仕組みはウェハー欠陥検査装置、工程内での使われ方はインライン検査とは?で解説しています。

参考・出典