半導体検査装置とは?種類と世界シェア|検査とテストの違いをわかりやすく解説
半導体の製造では、つくることと同じくらい「正しくできているかを確かめること」に手間がかかります。回路は目で見えず、不良は完成してからでは手遅れになるためです。
そのために使われるのが検査装置ですが、この分野は種類が多く、しかも日本語では何もかもが「検査」と呼ばれるため、全体像がつかみにくい領域でもあります。
この記事では、半導体の検査装置を大きく2つに分けて整理したうえで、それぞれの装置の役割、世界シェアと主要メーカー、そしてAI半導体の時代に検査が急成長している理由まで解説します。
半導体検査装置とは
半導体検査装置は、製造の各段階でウェハーやチップの状態を調べ、不良を見つけるための装置です。
半導体は、1枚のウェハーに数百から数千個のチップを同時につくります。工程数は先端品で1,000を超えることもあり、そのどこかで異常が起きれば、それ以降の工程はすべて無駄になってしまいます。
そのため検査は、最後にまとめて行うものではなく、製造の途中に何度も組み込まれています。不良を早く見つけて原因を工程へ戻すことが、歩留まり(良品率)を左右します。この工程内で検査し制御する仕組みはインライン検査とは?工程内検査とAPCによる制御で解説しています。
市場としても存在感は大きく、SEMIの予測では2026年のテスト装置の売上は153億ドル、前年比31.0%増と見込まれています。これは前工程装置(同23.1%増)を上回る伸び率です。
検査装置は大きく2種類に分かれる
検査装置を理解する最大のコツは、目的の異なる2つのグループに分けて考えることです。
| 比較項目 | ①プロセス検査・計測 | ②電気的テスト |
|---|---|---|
| 行うタイミング | 前工程の途中(各工程の後) | 回路の完成後 |
| 調べること | 異物、傷、パターンの形や寸法 | 電気的に正しく動作するか |
| 方法 | 光や電子線で観察・測定する | 電気信号を入力し、応答を確認する |
| 目的 | 異常の早期発見と工程へのフィードバック | 良品と不良品の判定 |
| 代表的な装置 | 欠陥検査装置、測長SEM、膜厚計 | テスタ、プローバ、ハンドラ |
| 主なメーカー | KLA、日立ハイテク、レーザーテック | アドバンテスト、Teradyne、東京エレクトロン |
ひとことで言えば、①は「ちゃんとつくれているか」を見る検査、②は「ちゃんと動くか」を確かめる検査です。
業界団体のSEAJによる装置分類でも、工程途中の検査評価装置は各プロセスの分類に含まれる一方、テスティング装置・プロービング装置・ハンドラは「検査用装置」という独立した大分類になっています。両者は目的も市場も別物として扱われています。
①プロセス検査・計測装置の種類
欠陥検査装置
ウェハー上の異物、傷、パターンの欠けなどを見つける装置です。光を当てて画像を取得し、正常なパターンと比較することで異常を検出します。
検査には、微細な欠陥を見つける精度と、ウェハー1枚を短時間で調べる速度の両立が求められます。くわしくはウェハー欠陥検査装置の仕組みとは?で解説しています。この分野の最大手はKLAで、同社は2026年6月期に135.8億ドルの売上を計上しています。
測長SEM(CD-SEM)
電子顕微鏡を使って、回路パターンの寸法(線幅)を測定する装置です。設計どおりの太さで加工できているかを確認します。
露光やエッチングの条件が少しずれるだけで線幅は変わるため、測定結果は工程条件の調整に使われます。日立ハイテクが強みを持つ分野です。
マスク検査装置
ウェハーではなく、露光に使うマスク(レチクル)を検査する装置です。マスクに欠陥があれば、それがウェハー全面に転写されてしまうため、極めて重要な工程です。
とくにEUV用マスクの検査では、日本のレーザーテックが世界で唯一の供給者として知られています。同社の2025年6月期の売上高は2,514億円(前年比17.8%増)、営業利益率は48.8%に達しました。独占的な技術を持つ装置メーカーがいかに高収益になりうるかを示す例といえます。
膜厚・光学計測装置
成膜した膜の厚さや、パターンの重ね合わせのずれ(オーバーレイ)を測定する装置です。破壊せずに測れることが条件となるため、光を使った測定が中心になります。
検出した欠陥を拡大観察する装置についてはレビューSEMとは?で解説しています。
②電気的テストの装置
回路が完成した後は、実際に電気を流して動作を確認します。この工程では3種類の装置が組み合わせて使われます。
テスタ
チップに電気信号を送り、返ってくる応答が仕様どおりかを判定する装置本体です。ロジック用とメモリ用では求められる性能が異なります。
この分野はアドバンテストとTeradyneの二強で、アドバンテストの2026年3月期の売上高は1兆1,286億円、前年比44.7%増と急拡大し、初めて1兆円を超えました。
プローバ
ウェハーの状態で検査する際に、チップの微細な電極に針を正確に当てる装置です。テスタが「試験する装置」だとすれば、プローバは「試験対象へつなぐ装置」にあたります。東京エレクトロンや東京精密が主要メーカーです。
ハンドラ
個片化されたチップをテスタへ搬送し、温度条件を与えながら試験する装置です。実使用環境に近い高温・低温での動作確認に用いられます。
テスタ、プローバ、ハンドラの役割の違いはプローバとテスタの違いとは?でくわしく解説しています。
ウェハーテストで針を当てる部材についてはプローブカードとは?をご覧ください。
なぜ今、検査とテストが急成長しているのか
検査・テスト分野が前工程装置を上回る成長率を示している背景には、AI向け半導体の構造的な変化があります。
チップが複雑になり、テスト時間が伸びている
AI向けの半導体は回路規模が大きく、確認すべき項目も膨大です。1個あたりのテストにかかる時間が伸びれば、同じ生産量をこなすためにより多くのテスタが必要になります。アドバンテストの急成長は、この構造を反映したものです。
積層する前に良品を確定させる必要がある
より本質的な変化がこちらです。HBM(広帯域メモリ)はDRAMを何段も積み重ね、チップレットは複数のチップを1つのパッケージに組み合わせます。
ここで問題になるのが、1つでも不良チップが混じると、組み合わせた製品全体が不良になることです。しかも巻き添えになるのは、正常だった高価なチップです。
そのため、積層・接合する前の段階で「このチップは確実に良品である」と保証する必要があります。これがKGD(Known Good Die=良品と確認されたチップ)という考え方です。
後工程でチップを組み合わせる技術が広がった結果、従来は「完成後に不良を取り除く」で足りていたものが、「組み合わせる前に良品を確定させる」へと変わりました。検査の位置づけが変わったことが、市場の伸びにつながっています。
世界シェアと主要メーカー
検査装置は、日本企業の存在感が際立つ分野です。
| 企業 | 国 | 強みのある領域 |
|---|---|---|
| KLA | 米国 | 欠陥検査・計測の最大手 |
| アドバンテスト | 日本 | テスタ。2026年3月期に売上1兆円超 |
| Teradyne | 米国 | テスタ |
| レーザーテック | 日本 | EUVマスク検査で世界唯一の供給者 |
| 日立ハイテク | 日本 | 測長SEMなど電子線を使った計測 |
| 東京エレクトロン | 日本 | プローバで世界1位(同社公表) |
| 東京精密 | 日本 | プローバ、計測機器 |
欠陥検査ではKLAが圧倒的ですが、それ以外の領域では日本企業が上位を占めています。とくにテスタ、プローバ、マスク検査、測長SEMは、日本勢が世界的な地位を持つ分野です。
各社の売上規模の比較は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026をご覧ください。
なお、テストに合格した製品が長期間もつかを確かめる工程は別に存在します。詳しくは半導体の信頼性試験とは?をご覧ください。
検査は「コスト」ではなく「投資」
検査工程は、それ自体が製品に付加価値を加えるわけではありません。削れるなら削りたい工程に見えます。しかし実際には、逆の判断がなされています。
理由は、不良を見つけるのが遅れるほど損失が大きくなるからです。前工程の序盤で異常に気づけば、そのウェハーだけの問題で済みます。しかし気づかないまま工程を進めれば、その後の数百工程分の加工費がすべて無駄になります。パッケージまで進んでから発覚すれば、損失はさらに膨らみます。
検査装置は、この「損失の拡大を止める」ために導入されます。加えて、検査で得たデータは工程条件の改善に使われ、歩留まりそのものを引き上げます。検査への投資が製造コストを下げる、という構造です。
検査は、それ自体では何も生み出さない工程です。それでも、これだけの投資が向けられている。
「作る」と同じくらい「確かめる」を大事にする——当たり前のようで、実行し続けるのは難しいことです。この分野の存在感には、ものづくり全般に通じる示唆があると感じます。
— semisouchi.com 編集室
よくある質問
検査装置は英語で何と言いますか?
目的によって単語が使い分けられます。この区別は日本語では見えにくいため、押さえておくと理解が進みます。
- inspection:欠陥や異物を「見つける」検査
- metrology:寸法や膜厚を「測る」計測
- test:電気的に「動作を確かめる」試験
日本語ではいずれも「検査」と訳されがちですが、英語資料では明確に区別されています。
すべてのチップを検査するのですか?
電気的テストは、出荷する製品の品質を保証するため全数に対して行われるのが基本です。一方、工程途中の検査は、時間との兼ね合いから抜き取りで行われる場合もあります。どこまで検査するかは、コストと品質のバランスで決まります。
検査装置メーカーはなぜ日本企業が強いのですか?
光学技術、電子線技術、精密な位置決め技術といった、長年の蓄積が必要な領域が中心だからです。これらは短期間で追いつくのが難しく、装置を替えると評価基準が変わってしまうため、顧客も簡単には乗り換えません。
検査装置とテスト装置は同じものですか?
異なります。一般に検査装置は工程途中でウェハーの状態を調べる装置、テスト装置は完成した回路の電気的な動作を確認する装置を指します。市場統計でも別々に集計されるのが通例です。
まとめ
- 検査装置は「プロセス検査・計測」と「電気的テスト」の2つに大別できる
- 前者は欠陥検査装置・測長SEM・マスク検査装置など、後者はテスタ・プローバ・ハンドラ
- HBMやチップレットの普及で、積層前に良品を確定させるKGDの重要性が高まっている
- 2026年のテスト装置市場は前年比31.0%増と、前工程装置を上回る成長が見込まれる
- KLAが欠陥検査で最大手、テスタ・プローバ・マスク検査では日本企業が世界的地位を持つ
個別の装置については今後の記事でくわしく解説していきます。装置全体の位置づけは半導体製造装置とは?種類と役割を工程順にわかりやすく解説をご覧ください。
参考・出典
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置分類表」
- SEMI「Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028」(2026年7月14日)
- KLA「Fiscal 2025 Fourth Quarter and Full Year Results」
- アドバンテスト「2026年3月期 決算短信」(PDF)
- レーザーテック「業績報告」
- 東京エレクトロン「東京エレクトロンを知る」(製品別世界順位)