ダイボンダーとワイヤボンダーの違いとは?接続技術の進化までわかりやすく解説
後工程には「ボンディング」と名のつく装置が複数あり、混同されやすい部分です。とくにダイボンダーとワイヤボンダーは、名前が似ているうえに続けて使われるため、違いが分かりにくくなっています。
結論から言えば、この2つは役割がまったく異なり、順番に使うものです。さらに近年は、ワイヤを使わない接続方法が広がり、この分野は大きな転換期を迎えています。
この記事では、2つの装置の違いを整理したうえで、接続技術がどう進化してきたか、主要メーカーの状況までを解説します。
ダイボンダーとワイヤボンダーの違い
| 比較項目 | ダイボンダー | ワイヤボンダー |
|---|---|---|
| 役割 | チップを基板に固定する | 電極どうしを金属線でつなぐ |
| 目的 | 位置を決めて動かないようにする | 電気を流せるようにする |
| 使う材料 | 接着剤、フィルム、はんだ | 金や銅などの細い線 |
| 工程の順番 | 先 | 後 |
| 英語 | die bonder | wire bonder |
ひとことで言えば、ダイボンダーは「置いて留める」装置、ワイヤボンダーは「つないで通す」装置です。
チップを基板の上に固定しただけでは、電気は流れません。逆に、固定されていないチップに線をつなぐことはできません。両方があって初めて、チップは回路として機能します。
ダイボンダー|チップを固定する
ダイボンダーは、切り分けられたチップを基板やリードフレームの決められた位置に載せ、接着する装置です。
接着の方法はいくつかあります。
- ペースト:接着剤を塗布してチップを載せる
- フィルム(DAF):あらかじめチップの裏面に貼られた接着フィルムを使う
- はんだ・共晶接合:金属で接合する。放熱性が求められる用途に用いられる
求められるのは、位置精度と速度の両立です。1個ずつ正確に置きながら、量産に耐える速さで処理しなければなりません。
近年、この精度への要求が急激に高まっています。複数のチップを1つのパッケージに並べるチップレットや、チップを積み重ねるHBMでは、わずかなずれが接続不良につながるためです。かつては「載せて留める」工程だったものが、製品性能を左右する精密工程へと位置づけを変えました。
ワイヤボンダー|電極どうしをつなぐ
ワイヤボンダーは、チップ上の電極と基板側の電極を、髪の毛よりも細い金属線で接続する装置です。1個のパッケージで数百本を接続することもあり、1本あたりコンマ数秒という速度で作業が進みます。
接合には、熱・荷重・超音波振動を組み合わせます。はんだのように溶かして付けるのではなく、金属どうしを押し付けて原子レベルで結合させるという方法です。接合の強度はボンドプル・シェアテストで確認されます。
接合方式は大きく2種類あります。
- ボールボンディング:線の先端を溶かして球状にし、押し付けて接合する。細かい接続に適する
- ウェッジボンディング:線を横から押し付けて接合する。太い線や大電流の用途に用いられる
金から銅へ|材料をめぐる現実的な選択
ワイヤボンディングでは長く金線が使われてきました。加工しやすく、酸化しにくいためです。
しかし金は高価です。1本は細くても、膨大な数を使えばコストは無視できません。そこでより安価な銅線への置き換えが進みました。
ただし銅は硬く、酸化しやすいという難点があります。硬い線を強く押し付ければチップを傷めるおそれがあり、酸化を防ぐためのガス管理も必要です。材料を変えるだけでは済まず、装置側の制御技術が伴って初めて実現した転換でした。コスト圧力が装置技術を進化させた例といえます。
接続技術の3世代|ワイヤの先にあるもの
チップと外部をつなぐ方法は、大きく3つの世代に整理できます。
| 方式 | つなぎ方 | 特徴 |
|---|---|---|
| ワイヤボンディング | 金属線で配線する | 実績が豊富で低コスト。接続数に限界がある |
| フリップチップ | チップを裏返し、突起電極で直接接続する | 接続数を増やせ、信号経路が短い |
| ハイブリッドボンディング | 電極と絶縁膜を直接接合する | 最も高密度。突起電極すら不要 |
フリップチップ|チップを裏返す
ワイヤボンディングでは、チップの外周にしか電極を配置できません。線をつなぐ場所が必要だからです。接続本数を増やそうとすると、外周だけでは足りなくなります。
そこで考えられたのが、チップを裏返して載せる方法です。チップの表面全体に突起状の電極(バンプ)を作り、基板に直接押し付けて接続します。面全体を使えるため接続数を大幅に増やせ、配線が短くなることで高速化にも有利です。
ハイブリッドボンディング|突起すらなくす
さらに進んだ方式が、ハイブリッドボンディングです。バンプを介さず、銅の電極と絶縁膜を同時に、直接接合します。
接続間隔を極めて狭くできるため、チップ間の通信量を飛躍的に高められます。くわしくはハイブリッドボンディングとは?で解説しています。HBMのようにメモリを積層する製品や、チップレットの接続で採用が進んでいます。
ただし条件は厳しく、接合面がナノレベルで平坦かつ清浄でなければなりません。わずかな凹凸や異物があれば、そこは接合されず不良になります。そのため前工程で使われるCMPが不可欠で、後工程の装置でありながら前工程の技術が組み込まれています。くわしくはCMP装置とは?研磨の仕組みと世界シェアをご覧ください。
ハイブリッドボンディングの市場規模は現時点ではまだ小さく、これから本格的に立ち上がる段階にあります。装置メーカー各社が開発に注力しているのは、ここが次の主戦場になると見られているためです。
TCB|フリップチップとハイブリッドの間にある技術
もう一つ押さえておきたいのが、TCB(熱圧着ボンディング)です。
チップを積み重ねる際、上下の電極を接合するには熱と圧力を同時に加える必要があります。TCBは、チップを1個ずつ位置合わせし、加熱しながら押し付けて接合する方式です。
HBMのようにDRAMを何段も積層する製品では、この方式が実用の中心を担ってきました。1個ずつ丁寧に接合するため時間はかかりますが、確実性が高いという利点があります。
積層数がさらに増えると、TCBでは処理時間や熱の影響が課題になります。そこで次の選択肢として検討されているのがハイブリッドボンディングという関係です。「ワイヤ→フリップチップ→ハイブリッド」という流れの中で、TCBはその橋渡しに位置づけられます。
パワー半導体では別の事情がある
ここまでは、AI向け半導体のように接続数を増やす方向の話でした。しかし用途が変われば、求められるものも変わります。
パワー半導体は、大きな電流を扱います。細い線では電流に耐えられないため、太いアルミ線や、線ではなく板状のリボンを使って接合する方法が採られます。接続本数を増やすのではなく、1本あたりの容量を確保することが重要になるのです。
また、車載用途では厳しい温度変化にさらされるため、接合部が熱による膨張・収縮の繰り返しに耐えられるかが問われます。「細く、多く」ではなく「太く、丈夫に」という正反対の要求があり、装置もそれに合わせて設計されています。
ボンディング装置と一括りにされがちですが、狙う市場によって技術の方向性はまったく異なります。
それでもワイヤボンディングは無くならない
新しい方式が登場すると、古い方式は消えるように思えます。しかしワイヤボンディングは、今も膨大な数の製品で使われています。
理由は、すべての半導体が最先端の接続を必要とするわけではないからです。
家電、車載、産業機器などに使われる半導体では、接続本数はそれほど多くありません。そうした製品にとっては、実績があり、設備も安く、確実に動作するワイヤボンディングが合理的な選択です。パワー半導体のように大電流を扱う用途では、太い線を使うワイヤボンディングが今も主役です。
先端技術と成熟技術が並存するという点は、装置産業を理解するうえで重要な視点です。
主要メーカー
| 企業 | 国・地域 | 特徴 |
|---|---|---|
| ASMPT | シンガポール・香港 | ダイボンダー、ワイヤボンダーを幅広く展開 |
| Besi | オランダ | ボンディング装置に特化。ハイブリッドボンディングに注力 |
| Kulicke & Soffa | 米国・シンガポール | ワイヤボンダーの大手 |
| キヤノンマシナリー | 日本 | ダイボンダーを展開 |
| ヤマハロボティクス | 日本 | ワイヤボンダー、ダイボンダー(旧・新川) |
| 東レエンジニアリング | 日本 | フリップチップ実装装置など |
なお、ワイヤボンダー・ダイボンダーを手がけていた新川は、2025年7月1日にアピックヤマダ・PFAと統合し、ヤマハロボティクス株式会社となりました。後工程の主要工程を一社に集約した再編です。
ダイシングや封止の分野では日本企業が高いシェアを持つ一方、ボンディング装置では海外勢の存在感が大きいのがこの分野の特徴です。とくにハイブリッドボンディングをめぐっては、各社が開発競争を繰り広げています。
封止工程についてはモールド装置とは?、後工程装置の全体像は半導体の後工程装置とは?、各社の売上規模は半導体製造装置メーカー世界ランキング2026で解説しています。
ワイヤボンディングは1960年代からある技術です。より新しい方式が登場した今も、現役で使われ続けています。
古いから劣っている、わけではない。適した場所で長く働き続ける技術には、静かな凄みがあります。
— semisouchi.com 編集室
よくある質問
ダイボンダーとワイヤボンダーは同じ装置で兼ねられますか?
通常は別の装置です。求められる動作も精度も異なるため、それぞれ専用の装置が使われます。
ワイヤはなぜあれほど細いのですか?
チップの電極が微細で、限られた面積に多数を配置する必要があるためです。細い線を、傷つけずに正確に接合する技術が求められます。
ハイブリッドボンディングはワイヤボンディングを置き換えますか?
用途が異なるため、単純な置き換えにはなりません。ハイブリッドボンディングは、チップ間で膨大なデータをやり取りする先端製品向けの技術です。一般的な用途では、引き続きワイヤボンディングやフリップチップが使われます。
ダイボンディングの前の工程は何ですか?
ウェハーをチップに切り分けるダイシングです。ダイシング装置とは?切断方式と世界シェアで解説しています。
まとめ
- ダイボンダーは「置いて留める」装置、ワイヤボンダーは「つないで通す」装置
- 工程はダイボンディングが先、ワイヤボンディングが後
- ワイヤの材料は、コスト圧力により金から銅への置き換えが進んだ
- 接続方式はワイヤ→フリップチップ→ハイブリッドボンディングと高密度化してきた
- ハイブリッドボンディングは平坦性の要求が厳しく、CMPなど前工程の技術が必要
- 先端技術が登場しても、ワイヤボンディングは成熟分野で使われ続ける
参考・出典
- 一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体製造装置分類表」
- SEMI「Global Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach a Record $229 Billion in 2028」(2026年7月14日)