スマートフォンやパソコンに入っている半導体チップは、1枚のシリコンウェハーに何百もの工程を重ねてつくられます。その一つひとつの工程を担当しているのが、半導体製造装置です。

ただ、装置の種類はあまりに多く、「露光装置」「エッチング装置」「CMP装置」と並べられても、どれが何をしているのか分かりにくいと感じる方が多いのではないでしょうか。

この記事では、半導体製造装置の全体像を製造の流れに沿って整理します。業界団体である日本半導体製造装置協会(SEAJ)の公式分類も参照しながら、どの工程でどの装置が使われ、どのメーカーが強いのかまでをまとめました。

半導体製造装置とは

半導体製造装置とは、シリコンウェハーに電子回路を作り込み、チップとして使える形に仕上げるまでに使われる、専用の製造機械の総称です。

一般的な工作機械と違い、半導体製造装置には次のような特徴があります。

  • 扱う寸法が極端に小さい:最先端のロジック半導体では、回路の一部が数ナノメートル(1ナノメートル=100万分の1ミリ)という領域に入ります。装置には原子レベルの制御精度が求められます。
  • 1工程1装置の専用機である:1台で何でもできる装置はありません。膜をつける、削る、洗う、といった工程ごとに専用の装置が存在します。
  • 1台が非常に高価である:前工程で使われる装置は1台あたり数億円規模のものが多く、最先端のEUV露光装置になると1台で数百億円規模とされています。

そのため半導体工場(ファブ)の建設費は、その大半が装置の購入費で占められます。「半導体工場をつくる」ことは、実質的に「装置をそろえる」ことに近いといえます。

市場規模も大きく、SEMIの予測では、2026年の世界の半導体製造装置売上高は前年比23.2%増の1,659億ドルと、過去最高になる見込みです。

半導体ができるまでの4ステージと装置の関係

装置を理解する近道は、製造の流れの中に位置づけて覚えることです。半導体づくりは、大きく次の4つのステージに分かれます。

ステージ やること 代表的な装置
①ウェハー製造 シリコンの単結晶を育て、薄い円板に加工する 単結晶引き上げ装置、切断装置、研磨装置
②前工程 ウェハー上に回路を作り込む 露光装置、成膜装置、エッチング装置、洗浄装置、CMP装置ほか
③後工程 ウェハーを切り分け、パッケージに封止する ダイシング装置、ボンディング装置、モールド装置
④検査・計測 各段階で不良を見つけ、最終的な性能を確認する 欠陥検査装置、測長SEM、テスタ、プローバ

なお、SEAJが公開している「半導体製造装置分類表」では、装置は「半導体設計用装置」「マスク・レチクル製造用装置」「ウェーハ製造用装置」「ウェーハプロセス用処理装置」「組立用装置」「検査用装置」「関連装置」の7つの大分類に整理されています。一般に「半導体製造装置」と呼ばれるときの中心は、このうちウェーハプロセス用処理装置(前工程)、組立用装置(後工程)、検査用装置の3つです。

この記事でも、その3つを順に見ていきます。

前工程の装置|ウェハーに回路を「作り込む」

前工程は、鏡のように磨かれたシリコンウェハーの表面に、トランジスタや配線を形成する工程です。半導体製造装置の中でも、種類・金額ともに最大の比重を占めます。

前工程は一直線ではなく「サイクルの繰り返し」

ここが、前工程を理解するうえで最初のつまずきになりやすいポイントです。

前工程は、装置を1台ずつ順番に通過して終わり、という一本道ではありません。実際には、

膜をつける(成膜)→ 感光材を塗る → 回路を焼き付ける(露光)→ 現像する → 不要部分を削る(エッチング)→ 洗浄する

という一連のサイクルを、層を変えながら何十回も繰り返します。最先端のロジック半導体では、この繰り返しによって工程数が1,000を超えることもあります。同じ露光装置の前に、1枚のウェハーが何度も戻ってくるイメージです。

「装置の種類は数十なのに、工程数は数百から1,000超」という一見矛盾した数字は、この繰り返し構造から生まれています。

露光装置(リソグラフィ装置)

回路のパターンが描かれたマスク(レチクル)に光を当て、ウェハー上の感光材(レジスト)にパターンを転写する装置です。写真の引き伸ばし機に近い仕組みで、半導体の微細化を直接左右する最重要装置とされています。

光源の波長によって世代が分かれ、現在の最先端はEUV(極端紫外線)を使うEUV露光装置です。EUV露光装置を製造できるのは、オランダのASML1社のみという特異な市場になっています。ArF液浸などのDUV露光装置では、キヤノンとニコンも製品を展開しています。くわしくは露光装置とは?仕組みと世界シェアで解説しています。

レジスト処理装置(コータ・デベロッパ)

露光の前後で、感光材を塗る(コータ)、露光後に現像する(デベロッパ)を担当する装置です。露光装置と直結して使われることが多く、東京エレクトロンが高いシェアを持つ分野として知られています。

エッチング装置

レジストで覆われていない部分を削り取り、回路の形を掘り出す装置です。プラズマを使うドライエッチングが主流で、薬液を使うウェットエッチングと区別されます。

3D NANDのように深い穴を垂直に掘る構造では、エッチングの難易度が急激に上がっており、装置の重要性は年々高まっています。主要メーカーはLam Research、東京エレクトロン、Applied Materialsなどです。くわしくはエッチング装置とは?ドライとウェットの違い・仕組み・世界シェアで解説しています。

成膜装置(CVD・PVD・ALD)

ウェハーの表面に、絶縁膜や金属膜などの薄い膜をつける装置です。方式によって次のように分かれます。

  • CVD:ガスを化学反応させて膜をつくる方式
  • PVD(スパッタリング):材料を物理的に叩き出して積もらせる方式
  • ALD:原子1層ずつ積み上げる方式。微細化に伴い採用が広がっています

Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロンのほか、日本ではKOKUSAI ELECTRICやアルバックが強みを持ちます。くわしくは成膜装置とは?CVD・PVD・ALDの違いと世界シェアで解説しています。

洗浄装置

工程の合間に、ウェハー表面の微細なゴミ(パーティクル)や汚染を取り除く装置です。地味に見えますが、前工程では洗浄が全工程の3割程度を占めるとも言われるほど頻繁に行われ、歩留まり(良品率)に直結します。

枚葉式とバッチ式があり、SCREENホールディングスが世界的に高いシェアを持つ、日本企業が強い領域です。くわしくは半導体洗浄装置とは?仕組み・種類と世界シェアで解説しています。

熱処理装置・イオン注入装置

イオン注入装置は、シリコンに不純物(イオン)を打ち込み、電気的な性質を持たせる装置です。熱処理装置は、高温で酸化膜をつくったり、打ち込んだ不純物を活性化させたりします。縦型炉に代表されるバッチ式と、1枚ずつ短時間で加熱する枚葉式(RTP)があります。くわしくは熱処理装置とは?縦型炉と枚葉式RTPの違いで解説しています。

CMP装置

CMP(化学機械研磨)は、スラリーと呼ばれる研磨剤を使い、ウェハー表面を化学的・機械的に平坦化する装置です。何層も重ねる多層配線では、下地が凸凹のままだと露光時にピントが合わなくなるため、平坦化は必須の工程になっています。Applied Materialsと荏原製作所が主要メーカーです。くわしくはCMP装置とは?研磨の仕組みと世界シェアで解説しています。

後工程の装置|チップとして「仕上げる」

回路が完成したウェハーを、実際に使える部品の形にするのが後工程です。

ダイシング装置

1枚のウェハーに並んだ多数のチップを、1個ずつに切り分ける装置です。極細のブレードで切断する方式のほか、レーザーを使う方式もあります。この分野ではディスコが世界的に高いシェアを持ち、東京精密も主要メーカーです。くわしくはダイシング装置とは?切断方式と世界シェアで解説しています。

ボンディング装置

切り出したチップを基板に固定し(ダイボンダー)、電極どうしを金属の細線でつなぐ(ワイヤボンダー)装置です。近年は、チップどうしを直接接合するハイブリッドボンディング装置が、AI向け半導体の高性能化を支える技術として注目されています。装置の違いはダイボンダーとワイヤボンダーの違いとは?で解説しています。

パッケージング(モールド)装置

チップを樹脂で封止し、外部から保護する装置です。半導体封止装置ではTOWAが高いシェアを持ちます。

かつて後工程は「前工程に比べて技術的な難度が低い」と見られがちでしたが、チップレットや3D積層といった先端パッケージ技術の普及により、位置づけは大きく変わりました。性能向上を微細化だけに頼れなくなった今、後工程は競争の主戦場のひとつになっています。

検査・計測装置|「工程中の検査」と「最終テスト」は別物

検査装置は種類が多く、混同されやすい分野です。大きく2つに分けて考えると整理できます。

①製造工程の途中で行う検査・計測

ウェハー上の異物や傷を見つける欠陥検査装置、線幅を測る測長SEM(CD-SEM)、膜厚計などが含まれます。不良を早く見つけて工程にフィードバックすることが目的で、KLAが世界最大手、日本では日立ハイテクやレーザーテックが存在感を持ちます。

②完成後の電気的な最終テスト

チップが仕様どおりに動くかを電気信号で検査する工程です。テスタ(試験装置本体)、プローバ(ウェハー状態で電極に針を当てる装置)、ハンドラ(個片化されたチップを搬送する装置)が組み合わせて使われます。テスタではアドバンテストとTeradyneが二強で、プローバは東京エレクトロンや東京精密が有力です。3つの装置の違いはプローバとテスタの違いとは?で解説しています。

SEAJの分類表でも、工程中の検査評価装置は各プロセスの分類に含まれる一方、テスティング装置・プロービング装置・ハンドラは「検査用装置」として独立した大分類になっています。両者は目的も市場も異なる、と押さえておくと理解しやすくなります。検査装置の種類については半導体検査装置とは?種類と世界シェアでくわしく解説しています。

数字で見る|どの装置に一番お金が使われているのか

装置の重みを実感するには、市場規模の内訳が役立ちます。SEMIが2026年7月に発表した予測では、2026年の内訳は次のとおりです。

区分 2026年予測 前年比 全体に占める割合
前工程(ウェハーファブ装置) 1,439億ドル +23.1% 約87%
テスト装置 153億ドル +31.0% 約9%
組立・パッケージング装置 67億ドル +9.6% 約4%
合計 1,659億ドル +23.2% 100%

金額では前工程装置が約9割を占めます。一方で伸び率に注目すると、2026年はテスト装置が最も高い成長率です。これはAI向け半導体の複雑化により、テスト工程の負担が増していることを反映しています。

日本市場も好調で、SEAJは2026年度の日本製半導体製造装置の販売高を、前年度比26%増の6兆5,502億円と予測しています。市場規模の推移や地域別の内訳は半導体製造装置の市場規模と今後の予測で解説しています。

主要メーカーと日本企業の位置づけ

世界の半導体製造装置市場は、

Applied Materials(米, アメリカ)

ASML(蘭, オランダ)

Lam Research(米, アメリカ)

東京エレクトロン(日, 日本)

KLA(米, アメリカ)

の5社が上位を占める寡占的な構造になっています。

日本企業は、この上位グループに東京エレクトロンが入るだけでなく、工程ごとの専門領域でも高いシェアを持っています。

工程・装置 強みを持つ日本企業の例
コータ・デベロッパ、エッチング、成膜 東京エレクトロン
洗浄装置 SCREENホールディングス
熱処理・成膜装置 KOKUSAI ELECTRIC、アルバック
CMP装置 荏原製作所
ダイシング装置 ディスコ、東京精密
封止(モールド)装置 TOWA
テスタ アドバンテスト
検査・計測装置 日立ハイテク、レーザーテック

露光装置ではASMLに大きく水をあけられている一方、洗浄・熱処理・ダイシング・封止・テストといった領域では、日本企業が世界トップクラスの地位を保っています。「日本は半導体そのものでは後退したが、装置と材料では強い」と言われるのは、この構造によるものです。各社の売上規模については半導体製造装置メーカー世界ランキング2026でくわしく比較しています。

よくある質問

半導体製造装置は1台いくらくらいですか?

装置の種類によって大きく異なります。前工程で使われる装置は1台数億円規模のものが多く、最先端のEUV露光装置は1台で数百億円規模とされています。工場全体では、装置の総額が数千億円から1兆円を超えることもあります。

前工程と後工程では、どちらが重要ですか?

金額では前工程が圧倒的ですが、重要性という意味では両方です。微細化のペースが鈍化した近年は、チップを組み合わせて性能を高める先端パッケージ技術の価値が高まり、後工程の重要度が急速に上がっています。前工程と後工程の違いについては、半導体の前工程と後工程の違い|図解でわかりやすく比較でくわしく解説しています。

装置メーカーはどんな仕事をしているのですか?

装置の設計・開発だけでなく、顧客の工場に装置を据え付ける立ち上げ作業、稼働後の保守・メンテナンス、プロセス条件の作り込みを支援するプロセスエンジニアなど、職種は多岐にわたります。装置メーカーの仕事内容についても、別記事で取り上げる予定です。

装置さえ買えば半導体はつくれますか?

つくれません。装置は「使いこなす技術」とセットで初めて機能します。同じ装置を導入しても、条件の作り込みや不良解析の蓄積によって歩留まりに差が出るため、装置の入手と量産の成功は別問題です。輸出規制の議論で装置が焦点になる一方、規制を受けた側がすぐには追いつけない理由も、ここにあります。

まとめ

半導体製造装置の全体像は、次のように整理できます。

  • 製造の流れは「ウェハー製造 → 前工程 → 後工程 → 検査」の4ステージ
  • 前工程は成膜・露光・エッチング・洗浄のサイクルを何十回も繰り返す構造で、装置市場の約9割を占める
  • 後工程は先端パッケージの普及で重要性が上昇している
  • 検査装置は「工程中の検査」と「完成後の最終テスト」に分かれる
  • 市場は上位5社の寡占だが、日本企業は洗浄・熱処理・ダイシング・封止・テストなどで強い

個々の装置の仕組みや世界シェアについては、今後それぞれの記事でくわしく解説していきます。

参考・出典